5月13日、野田佳彦首相が第5回日中韓サミット出席のため北京を訪問した。翌14日には、現職首相北京訪問中という絶妙のタイミングで、世界ウイグル会議第4回総会が東京の憲政記念館で開催された。
中国側報道によれば、温家宝首相は野田首相に「中国側の核心的利益と重大な関心事項を尊重すべきだ」と述べたという。
会談では尖閣問題と世界ウイグル会議が議論されたため、日本では「尖閣」が中国の「核心的利益」に含まれるか否かが大問題になった。
翌5月15日、再び中国外交部は「中国の内政に対する重大な干渉であり、中国の核心的利益を損ね、中国人民の感情を傷つけた」と噛み付いた。
今度の相手は何と英国政府、前日ロンドンでデビッド・キャメロン英首相がダライ・ラマと会見したことに対する厳重抗議だそうだ。
それにしても、中国政府は一体どんな基準で抗議内容を決めるのだろうか。今回はちょっと長くなるが、中国が抗議声明の中で多用する「不満」「憤慨」「反対」「核心的利益」とチベット、ウイグルとの関係、という素朴な疑問を検証してみたい。(文中敬称略)
世界ウイグル会議
世界ウイグル会議(The World Uyghur Congress)総会はこれまで計3回開かれている。第1回と第2回はいずれもドイツのミュンヘンで2004年4月16日と2006年11月24~27日に開かれた。第3回総会は2009年5月21~25日に米国ワシントンで開かれている。
記録を見る限り、ワシントンでの第3回総会開催に対する中国外交部のコメントは見つからない。2009年7月9日の記者会見で世界ウイグル会議について問われた際も、中国外交部報道官は以下の通り述べただけで、米政府に対する批判は避けている。
「テロリズムは国際社会の敵であり、宗教的過激勢力、民族分離勢力を加えた“三悪勢力”は中国および関係諸国全体に内在する公害である(恐怖主义是国际社会的公敌,“三股势力”,即宗教极端势力,民族分裂势力和恐怖势力,是包括中国和有关国家在内的本地区的公害)」
これに比べると、2012年3月31日に訪日したチベット亡命政府のロブサン・センゲ(洛桑孙根)「首相」に対する中国側の反応の方がずっと厳しい。
中国外交部は翌4月1日、「(日本がセンゲの)訪問を放任していることに強烈な不満を表明する」とし、日本側が「テロリスト反中分裂勢力にいかなる支持も便宜も与えず」「実際の行動で中日関係の大局を守る」よう求める談話を発表したという。