東日本大震災発生から現在までの1年、日本はこれまでの想像を超えるチャレンジに直面してきた。その1つは、日本の今後において重要な鍵を握るエネルギー戦略が、福島の原発事故とともに根底から覆されたことだ。政府は震災前、発電量に占める原発の割合を約3分の1から、2030年までに半分程度に拡大する方針を打ち出していた。だが今この計画を実現することは不可能に近い。
日本の長期的なエネルギー戦略は今後どこへ向かうのだろうか? 本報告書のスタートポイントとなったのはこの問いだ。
エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)は、研究機関・企業・大学などの分野から国内外の著名なエキスパートを集め、現在白熱している議論の焦点となっている論点を超えた大きな視野からエネルギー問題の分析を行うよう依頼した。
論文の寄稿、あるいは詳細にわたるインタビューという形で本報告書に参加した専門家は、日本のエネルギー計画における戦略的な重要事項・再生可能エネルギー普及拡大の可能性・エネルギー効率化促進のための方策・企業やビジネスのエネルギー需要に対応するための方策・発電や送配電部門をはじめとする電力制度改革推進に向けた課題・日本が海外のエネルギー戦略事例から学べる教訓など、持続可能かつ安全保障上の要件を満たす将来的なエネルギー戦略を確立するために重要な根本的問題を検証している。
本報告書はGEの協賛の下作成された。寄稿された論文・インタビュー概要の作成・編集は、著者自身とEIUによって行われており*1、協賛企業の見解を反映するものではない。
*1=第1・6・7章の論文は英語で寄稿され、第2・3・4・5章の論文およびインタビュー記事は日本語で寄稿・作成された。本報告書の編集は、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットのデビッド・ラインが統轄。第2・5章のインタビューと翻訳編集は森隆人と長野アミ、レイアウトとデザインはガディ・タム、カバーイメージのデザインはウェイ・ラムが担当した