バンクーバー新報 2012年3月29日第13号

 福島第一原子力発電所の事故から1年が経った3月11日、サイモンフレーザー大学ダウンタウン校で、原子力に関する会議 "The Fukushima Nuclear Disaster ― One Year Later" が開催された。主催はフィジシャンズ・フォー・グローバル・サバイバル。

 福島原発事故を振り返り、さまざまな角度から原子力発電、または原子力を検証する会議となった。テーマは大きく分けて3つ。原発事故に対する一般的な考察、カナダとの関係、日本からの報告。前日には東日本大震災当時、東京に滞在していた経験をまとめたドキュメンタリーフィルムも上映された。

原発事故に対する一般的な考察

会議の様子。朝9時から夕方5時半まで11の講演とワークショップが開かれた

 福島事故と1986年に起こったチェルノブイリ事故とを比較した講演を行ったのはアーノルド・ガンダーソン氏。エネルギーコンサルティング会社フェアウィンズ・アソシエイツのチーフエンジニアで、原子力産業界で原発の安全性に疑問を投げかけていた元幹部、スリーマイルアイランド事故の調査では専門家証人を務めた経歴を持つ。

 講演の中でガンダーソン氏は、両事故の違いについて、チェルノブイリは2週間以内に放射性物質の放出が止まったが、福島は1年経った今でも放出し続けていること、原子炉心がチェルノブイリは1つだったのに対して、福島は10あることを指摘した。類似点は、どちらの場合も、政府による情報隠ぺいが行われたことを挙げた。

 福島事故の長期的な影響の可能性については、第1に経済的な負担が38兆円に上ること、第2に今後20年間でガン患者が100万人増加しその他の健康被害も予想されること、第3に焼却による放射性物質の飛散は事態を全国規模に拡大し悪化させることを挙げた。

 チェルノブイリか福島かどちらが最悪のケースかという問いにはどちらも最悪と答え、「自然災害だろうと人災だろうと誰も最悪の事態を予測することはできない。原子力エネルギーは財政的にも環境面でも国を滅ぼす可能性を秘めている技術だ」と締めくくった。日本は再生可能エネルギーを主とする国造りを先駆者として実現できる高い技術を持った国。それを将来に活かしてほしいと希望を語った。