中国の農村と聞いて多くの人は暴動や貧困の話なのではと思うかもしれない。しかし、今回は暴動や貧困の話ではない。急速に変貌する中国の農村について書いてみたい。
2012年3月、北京から西南の方向に車で3時間ほど、河北省の旧省都である保定に近い農村を訪ねる機会があった。
北京や上海が急速に発展し高層ビルが林立する都市に変貌したことは多くの人が知っていると思うが、農村も急速に変化している。日本の農村が戦後70年かけて行ってきたことを、中国はここ10年ほどで成し遂げてしまった。
今回の訪問でまず驚いたのが、中国におけるインフラ整備の速さだ。一昔前の中国では車線が明確でないことから、乗った車が遅い車を追い抜くたびに、対向車と正面衝突するのではないかとヒヤヒヤしたものだ。
しかし、今回はそんな恐怖を体験することはなかった。それは片道4車線もある高速道路が出来上がっていたためだ。路肩には「香港 2253km」などの標識があったから、おそらく香港まで通じているのだろう。入り口にはETCもあった。車線が多くまだ自動車の数が多くないことから、とても快適な旅だった。
1人の農民の耕す農地は決して広くない
ここで中国の農村について少し説明しよう。日本の農村では農地に農家が点在しているが、中国にはそのような風景はない。農家はある地域に密集しており、その周囲に広大な農地が広がっている。これは農地を効率よく使うためとされる。おそらく人民公社時代にそのような整理を行ったものと思われる。それは農民が1カ所にまとまっている方が管理しやすいという面もあったのだろう。
農民の生活は豊かとは言えないが、まずまずの水準にある。訪ねた農家にはハイアール製の冷蔵庫と「CHANGHONG」と銘打った液晶テレビが置いてあった。ただ、便所は水洗ではない。中国人はトイレの汚さはあまり気にならないようで、どこに行ってもトイレをきれいにすることが一番後回しになっている。
中国の農民は土地を所有していない。村が土地を所有しており、農民は村から農地を借りて耕作している。広大な農地が広がっていると言っても、1人の農民の耕す面積は決して広くない。
今回訪ねた農村では、1人の耕作面積は8.6アールと言っていた。これは1人分だから一家を5人家族とすると、耕作面積は0.43ヘクタールである。そこで主に小麦とトウモロコシを作っている。自分の農地までかなり距離があるために、昔は自転車で今はバイクや自動車に乗って農作業に行くのだそうだ。