東日本大震災の発生から1年が過ぎた。しかし、政権与党である民主党は内輪もめを繰り返すばかりで、最大野党である自民党の非協力もあり、国民が一丸となって被災地の復興に取り組む態勢はいつまでたっても築けないままである。

 そうした中、東京電力の、企業向け電気料金の値上げに関する対応が物議を醸している。

 詳しい内容は読者もご存じだと思うのでここでは触れないが、私が不思議に思っているのは、どうして東電は国民から憤激を買うことが火を見るより明らかな尊大かつ無反省な態度をとり続けるのかということである。

 殿様商売の体質が骨の髄まで浸み込んでいるとか、原発事故は天災で、自分たちに責任はないと考えているのだといった批判は確かに当たっているのだろうが、それだけでは説明しきれないふてぶてしさに、私は違和感を覚えている。

 3月下旬になって、マスコミが一斉に値上げについての報道を始めたのも私の目には奇異に映ったし、経済産業省が行政指導に入るとしゃしゃり出てきたタイミングの良さも、何か裏があると思わせるに十分だった。

 おそらく、今回の値上げに関する東電の厚顔無恥な振る舞いは、経済産業省と結託した猿芝居なのだ。実質的な国有化を目前にして、東電はこれ見よがしに悪役となり、経済産業省主導の態勢に移る中で、何らかの実利を確保しようとしているに違いない。

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 東日本大震災から1年を経て、私だけでなく、多くの人々が最も憤っているのは、原発事故の原因が究明されていないことではないだろうか。

 民間の有識者たちによって構成された「福島原発事故独立検証委員会」による報告書が公になっているが、東京電力の関係者は一切の事情聴取に応じなかったという。