中国、日本人死刑囚の刑執行 国交正常化以降初めて

都内の中国大使館前で、死刑の執行停止を求める国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの日本人メンバー〔AFPBB News

 前回は中国の「人権侵害」を取り上げた。要するに、欧米諸国は中国政府の悪行を厳しく批判するが、そもそも「神との契約」という「一神教の世界観」を持たない中国人に「人権尊重」「法の下の平等」を説いても、彼らはそれを「中国自身の問題」とは思わないということだ。

 しかし、中国に「神との契約」の伝統がないからといって、共産党による人権侵害が未来永劫正当化されるはずはない。国際社会の中で中国が真の国民国家として発展するためには、国民の基本的権利が世界水準で保護される必要がある。

 そこで今回は、欧米諸国が問題視する人権侵害とは具体的に何なのか、中国政府はそうした批判にいかに反論しているのかを改めて検証してみたい。ご紹介するのは米国務省の「国別人権状況報告」と中国政府による「米国の人権実績報告」である。

国務省の年次人権報告書

チャベス大統領、米国の人権報告にかみつく ベネズエラ

人権状況報告書にはこの人もかみついた(ベネズエラのウゴ・チャベス大統領)〔AFPBB News

 本年(2010年)3月11日、米国務省の民主主義・人権・労働局は「2009年版・国別人権状況報告(2009 Country Reports on Human Rights Practices)」を発表した。毎年この時期に、前年の世界190カ国以上の人権状況をまとめたもので、今年は中国部分だけでも30万字弱、A4で100ページ以上もある大作となった。

 この米国版「中国人権白書」の結論部分は日本でも簡単に報じられたが、全貌を詳しく報じる記事はない。新聞記者さんも忙しいから、こんな大部の報告書を全部読む暇はないのだろう。報告書の概要は過去数年間あまり変わっておらず、内容的に「新味がない」からかもしれない。

 だからというわけではないが、今回はまずこの2009年版報告書全体の構成と内容を若干詳しくご説明することから始めたい。

国務省人権局が見る中国

 報告書は冒頭で、中華人民共和国を「憲法上中国共産党が権力を独占する独裁国家」と定義したうえで、2009年中の「中国政府の人権問題に対する取り組みは引き続き不十分であり、一部では悪化している(remains poor and worsened in some areas)」と断じている。

 ちなみに、国務省は1999年からこの種の報告書を発表している。2009年版は11回目の報告となるが、これまで中国の人権状況が「改善した」とする記述は見つからなかった。今回の「remains poor and worsened in some areas」なる総合判断もここ数年ほとんど変わっていない。