サムスン電子や現代自動車など強い韓国大企業の成功の理由の1つが、オーナーによる大胆で迅速な意思決定にあることは間違いない。もちろんオーナー経営であるがゆえにでたらめな経営になった例も多いうえ、支配構造の問題などから韓国でもオーナー経営を批判する声は根強い。

 では、オーナーがいないとどうなるのか。大手銀行の社長の突然の辞任を機に、韓国では「やっぱりオーナー経営でないとだめなのか」という声が出ている。

 韓国の4大銀行の一角を占めるハナ金融グループの金宗烈(キム・ジョンヨル)社長(59)が最近、突然辞任した。金社長はグループナンバー2。日本の野村総合研究所で研修勤務したこともある日本通で、近くグループ会長に就任するという観測が金融界では強かった。

様々な憶測が飛び交うハナ金融グループの社長辞任

 金社長は辞任の理由を「自分がハナ金融グループによる外換銀行買収の障害になっている」などと述べた。ハナ金融グループは、米投資会社ローンスターから外換銀行を買収することで合意、現在政府の承認を待っている段階だ。

 金社長はこの交渉に深くかかわったが、外換銀行の労組が、合理化などに意欲を示す金社長の姿勢に反発していたとされる。金社長はハナ金融グループの悲願である外換銀行買収を成功させるため潔く身を引いたというわけだ。

 ところが、韓国の金融界でこの説明を額面通りに受け取る向きはほとんどない。長年、ナンバーワンとして君臨する金勝猷(キム・スンユ)会長(68)との間に最近、確執があったというのだ。

 金会長は、買収・合併を重ねてノンバンクを4大銀行のひとつに浮上させた立役者だ。経営能力に対する評価は高いが、銀行長(頭取)就任から15年以上という異例の長期政権になっている。

 長年、金会長に仕えてきた金社長だが、待てど暮らせど後継の座は来ない。とうとう2月で60歳を迎えることになった。韓国では大企業のトップといえども60歳になると引退時期を考える年齢だ。

 そんな中、最近になって「金会長が外部から後継者を起用することを検討しているという見方が出てきた」(韓国紙デスク)という。