資源ゴミを「持ってきてもらう」ことの大いなる意味とは?

川嶋 白井グループの母体は廃棄物業界で80年の歴史がある老舗企業。ユニークな新基軸を選択するに至った経緯が気になります。

白井 白井グループは公共と民間という、まったく市場が違う廃棄物事業を束ねた持ち株会社です。先代から受け継いだ公共の仕事を受け継いだのは兄で、私は民間の方を担いました。

 2000年に化学系の廃棄物会社にいた滝口を引き抜いたのは、民間の仕事をもっと拡大するのを手伝ってもらおうと考えたからです。しかしその後、民間のリサイクル事業を活性化したことが労働争議に発展するなど、壁にぶち当たった。それが2004年ごろです。

川嶋 なるほど。アメリカ視察は閉塞状態に風穴を開けるためだった・・・。

白井 ええ。新しいビジネスモデルを探そうと、滝口と2人で出かけました。最初に訪ねたのはウェイスト・マネジメントという会社。日本と違って欧米の廃棄物業界は巨大企業ばかりなんですが、中でも世界一と言われるところです。

 そこの社長に言われた一言が、とても示唆的でした。そのころの私は、事業拡大のためには清掃工場やリサイクル工場を持つべきかとも考えていたのですが、彼はそんなことするなって言うんです。

 おまえらみたいな物流専門の小さい会社を統合して、物流のイニシアチブを握った方がいい、と。

白井エコセンター社長の滝口 千明(たきぐち・ちあき)氏

滝口 廃棄物処理のプロセスは収集→処分→加工・・・という具合に分かれます。集めた後の作業は時代とともに大きく変わりますが、収集・物流の部分だけは変わりません。

 白井グループが80年も続いているのは、この物流に特化しているからなんですよ。

川嶋 持ち前の強みを生かすべきだと言われたわけですね。アメリカ視察を終えてから、インターンシップのほかにはどんな手を打ったのでしょう。

白井 アメリカのリサイクルシステムを参考に、「資源ゴミ買取市」を始めました。月に1度、新聞やペットボトル、廃油、衣料品などを持ってきてもらって、現金で買い取るというものです。2008年に始めて、翌年には東京・足立区の公共事業になりました。