2012年はロシアに何が起きるのか、例年以上に予想がつかない。
まず、3月4日には大統領選がある。今までの10年間は、誰が選ばれるのかを容易に予想することができた。だが、今年は違う。
2011年12月には、下院選挙の不正疑惑を巡ってプーチンに抗議する大規模なデモがモスクワで起きた。プーチンの信用は大きく失墜しており、大統領選でもたやすく勝利することはできないだろう。仮に再び政権の座に就いても、以前のように絶対的な権力を行使することはあり得ない。
昨年末の反プーチンのデモには、「野党勢力」だけではなく中産階級の一般市民も数多く参加した。その人たちの支持を取り戻すために、プーチンは多くの難しい課題をクリアしなければならない。
1回の投票で勝つべきか、再投票で勝つべきか
まず、大統領選を極めて「公正」に行わなければならない。下院選の時のように不正疑惑が広がれば、プーチンの当選は「またもや支配勢力の仕業だ」と攻撃を受けることになる。その後の6年の任期中、ずっと政権の正当性が問われ、反対ムードが広がり、数万人の大規模デモにつながる恐れがある。
これを避けたいプーチン陣営は「文句なしに当選する」方法を考えている。
選挙では、候補者の誰かが1回目の投票で過半数の票を獲得しなければ、2回目の投票が行われる。1回目の投票だけで当選してしまうのが政権復帰の早道だ。だが、プーチンの場合、2回目の投票にずれ込んで、そこで勝てば、「よく頑張って有権者の支持を得た」と評価され、「公正な選挙」が行われたイメージが強くなる。
プーチン陣営の中では、1回で勝つべきか、2回目に勝つべきか、どちらが望ましいか意見が分かれている。
確かに、2回目の投票にずれ込むと、以下のようなデメリットがある。まず、1回目の投票で勝てなかったことから「国民から完全には支持されていない」という印象が残る。また、2回目の投票でプーチンが当選する確率は100%ではない。「プーチンにはもう任せられない」というムードが国民の間に渦巻いており、2回目の投票で相手が誰であっても票が流れてしまう恐れがある。