日本の農業を中国へ――。今年は日本の栽培技術の中国への移転が活発化しそうだ。

 中国で食の安全性への意識が高まりつつある。その流れを受けて、日本の農業技術で作った低農薬、減農薬の「安全」な農産物を中国市場に広めようという動きが出てきている。 

 シンクタンクの日本総合研究所は2010年末から、日本の優れた農業技術・ノウハウを持つ種苗メーカーや農業法人、植物工場などの中国進出を支援している。

 中国では江蘇省蘇州市の「蘇州太湖国家観光リゾート区管理委員会」、同省張家港市の「張家港市現代農業模範園区管理委員会」と協力関係を築き、日本では三重銀行と協定を結んだ。中国進出に意欲ある三重県の農業・食品関連事業者と中国との橋渡しを行う。

 目指しているのは、日系企業が「中国で生産し、中国で販売する」ことである。これまでの「中国産の安い農産物を日本に輸出する」モデルとは異なる。

 中国では経済成長に伴い富裕層が急増し、付加価値の高い農産物・食品に対するニーズが高まっている。そのニーズが日本の農業活性化につながると期待する。

土壌汚染がある中国では水耕栽培が有効

 日系企業が技術供与する水耕栽培も始まっている。

 水耕栽培メーカーの協和(大阪府高槻市)は2011年5月、上海市松江区に2500平方メートルのガラス温室の中に果菜、葉菜の水耕栽培プラントを立ち上げた。同年11月にはレタス、サラダナ、チンゲンサイ、ミズナなどのサラダ用葉物類の生産をスタート。今後はトマト、キュウリ、パプリカ、メロンなどの栽培を計画している。

 収量は、1000平方メートル当たり大玉トマトでおよそ25トン。種蒔きから収穫まで3週間、露地栽培の3倍のスピードだ。価格は未定だが、上海市で流通する一般の野菜の3~5倍を想定している。

 この事業は、上海市政府参加の国営企業である上海国盛集団との合弁で始められた。主として協和が技術を、中国側が資金を提供する。同社の展示農場には、上海市政府からも関係者が見学に訪れており、関心の強さが伺える。