かねて出ていた観測の通り、米国携帯電話サービス業界における大型合併が失敗に終わった。加入者ベースで同国2位のAT&Tは19日、同4位のTモバイルUSAを買収する計画について、撤回することでTモバイルUSAの親会社、ドイツテレコムと合意したと発表した。

9カ月にわたる攻防戦に終止符

AT&TのTモバイル買収、米司法省が阻止へ

TモバイルUSAの買収に失敗した米AT&T〔AFPBB News

 この大型合併が成功すれば、米ベライゾン・ワイヤレスを追い抜き、米国最大の携帯電話サービス会社が誕生するはずだったが、規制当局などからの反対に遭い、計画の断念を余儀なくされた。

 これにより、AT&Tは2011年第4四半期(10~12月期)に40億ドルの税引き前損失を計上する。

 買収不成立に伴って、違約金30億ドルをドイツテレコムに支払うほか、10億ドル相当の無線周波数帯の免許を同社に譲渡するためだ。

 AT&TがTモバイルUSAを総額390億ドルで買収すると発表したのは今年の3月20日。それ以来9カ月間にわたり当局との戦いが続いてきた。

 この買収計画を巡っては当初から、同国で携帯電話サービス3位のスプリント・ネクステルが強く異議を唱え、買収を阻止するよう米政府に働きかけたり、米ニューヨーク州が調査に乗り出したりするなど逆風があった。

 ただAT&Tは、TモバイルUSAを買収しても、健全な市場競争が維持されることや、米国の地域社会に雇用がもたらされるなどと主張し、計画に自信を示していた。そうした状況に強い勢力で立ちはだかったのが米司法省(DOJ)と米連邦通信委員会(FCC)だ。

 8月31日にDOJが独占禁止法に基づく訴訟を提起したほか、11月になると、FCCも聴聞会を開く意向を示すなど買収阻止に向けた動きを見せた。