民主党の目玉政策であるはずの高速道路無料化を巡る混乱が続いている。前原誠司国土交通大臣と小沢一郎民主党幹事長の対立が報じられ、混乱の原因は小沢幹事長だ、という見方がマスメディアの大勢だ。

マニフェストが破られるのを放置し続けた国交大臣

鳩山内閣、09年補正予算の一部執行停止を閣議決定

菅直人・財務大臣〔AFPBB News

 事実は全く異なる。2003年に、当時の菅直人代表が私の高速道路無料化の提案を民主党のマニフェストに採用し、私を「影の内閣」の国土交通大臣に指名した。それ以来、私は、政権交代からこれまでの経緯をつぶさに見てきたし、高速道路無料化を巡る動きを体験してきた。

 今、私にはっきり分かるのは、前原国土交通大臣が、高速道路無料化の予算がマニフェストの6分の1にまで削減されるのを放置してきたということだ。そのため、新しい通行料金は、8割のユーザーにとっては値上げになる。

 本四架橋に至っては、JRやフェリーの利益を守るために、副大臣以下がまとめた案に、前原大臣自らが1000円上乗せした。こうした値上げが、地方の有権者の怒りを招き、混乱が始まったのだ。

 ここまでの言行から判断すれば、前原大臣は、国土交通大臣というより、運輸族大臣あるいはJR族大臣としか言いようがない。

 昨年(2009年)9月、「暮らしのための政治」をマニフェストの最初に掲げて、民主党政権が誕生した。特定の業界や官僚のための「利権政治」や「族議員政治」を脱し、生活者・消費者を重んじる政治に転換する、という民主党に国民は期待したはずだ。

世界一高い高速道路が地方の生活コストを圧迫

 その中で、高速道路無料化は、民主党マニフェストの重点政策に挙げられた。「流通コストの引き下げを通じて、生活コストの引き下げを図る」「地域経済を活性化する」「高速道路の出入り口を増設して、今ある社会資本を有効に使う」ことが、マニフェストの中で高速道路の無料化の政策目的として掲げられた。

 有効な政策である。交通から見れば、日本の国土の8割は鉄道網が貧弱で、自動車への依存度が9割を超える地域だ。そうした地域では、自動車は贅沢品でなく生活の必需品である。

 ところが、1キロ25円という世界一高い通行料金によって、地方の高速道路は毎日の生活には使えない贅沢品になっている。だから、高速道路無料化によって流通コストと生活コストを下げることを民主党が約束したとき、地方では多くの人が期待した。

 高速道路無料化の実行へのスケジュールと予算も、マニフェストに明記された。