ユニクロのモスクワ第1号店が4月2日に「ついに」開店した。「ついに」と言うのは、前評判があまりに高く、かなり前から話題になっていたからだ。

開店までに1年を費やしたユニクロのモスクワ店

 ユニクロの母体であるファーストリテイリングが、モスクワでショッピングモールを経営するインゲオコム社と店舗賃貸契約を結んだのが、昨年の8月。

ユニクロのモスクワ1号店が入居する「アトリウム」ショッピングセンター。地下鉄クルスカヤ駅のすぐ上にあって、交通の便は非常に良い。このショッピングセンターを所有するのが、INGEOKOM社。金融危機の始まる前、ロシアがバブル景気に沸いていた頃、同社はモスクワ市政府からこの建物の全権利を125億円で買い取り、現在は100%所有する。先日、同社の社長であるルディヤック氏に会ったが、まだ30代前半の若者。この国の面白さを感じる瞬間だ

 その年の春に、現在のロシア法人社長で当時経営計画部におられた山田直芳さんたちとモスクワでお話をさせていただいた私から見ると、ユニクロの開店を今か今かと丸1年間も待っていたことになる。(写真右)

 今年に入ってからも、ロシアの業界紙はユニクロの開店日を2月中旬だとか3月12日だとかいうように次々に報じて、首を長くして待っていた。報道の中には「春の開業は無理かもしれない」などという悲観的な記事もあった。

 こうした期待が大きい中で、ユニクロの開店が手こずった原因は何だったのだろうか。

 業界で広く語られているのは、輸入通関に予想以上の時間がかかった、ということ。1500平方メートルというモスクワのファッション専門店では最大級とも言える床面積の店舗に、ユニクロ方式であらゆる商品を色柄ごとに積み上げていく展示方式を取ると、ものすごい量の商品が必要となる。

1回目の輸入は少量にするのがノウハウ

 ロシアでは、コンテナ1本の貨物を輸入する際にも、その中に1品でも問題が見つかるとコンテナの中身全部の輸入手続が止まってしまう。この問題は過去トヨタ自動車のサンクト工場でも発生したことがあって、サンクトペテルブルクの港に到着したパーツを入れたコンテナが何週間にもわたって通関できない事態が発生し、組み立てラインの操業に影響が出た。

 通関ブローカーに言わせると、第1回の輸入通関というのは、誰が何を輸入するのか、税関が輸入者の実像を知らないところでの通関業務のため、少量を通関にかけて税関に安心感を与えるのがコツなのだそうだ。

 そうすれば、2回目からは大量に持ってきてもスムーズにいく、ということだった。