アジア各国に歴史的軍拡時代が訪れている。
ここには認識の誤謬(びゅう)を起こす罠が2つ隠れている。1つは、日本の言論空間から見ている限り、その実態に想像力が働かないことだ。なぜなら過去10年(1998~2008年)間、国防予算を増やさず、むしろ減らした国は、全アジアの中で日本だけだからである。
アジアの力学はほかと違う
英国は原子力潜水艦の削減を発表したが、それは欧州の話。写真は英海軍の原潜バンガード〔AFPBB News〕
平和ボケよろしく、日本の景色や思い込みを基にアジアの他国も同じだろう(中国は例外にせよ)と推測することは、大いに認識を誤る結果をもたらす。
いま1つ、軍縮論議を長年仕切ってきた大西洋両岸の戦略家たちに、この際議論を委ねていては危ういということをも意味する。ロンドン、パリ、ブラッセル、フランクフルト、それからワシントンの人たちに任せて能事足れりとするわけにはいかない。
欧州正面でだけなら、この10年に起きたことは西側勢力の東漸(とうぜん)であり、北大西洋条約機構(NATO)の外延的拡大であって、その結果軍事的緊張は確かに激減した。
だがこの事実を他に類推されたのでは、アジアの力学は全く見えなくなる。この点は後でまた触れることにする。
別表は、アジアの主だった国々で、国防予算が過去10年のうち何倍になったかを示す。
現地通貨で見るのが肝心

元データは、ストックホルム国際平和研究所などが運営し、各種統計を掲げているサイト(「FIRST」)から取った。最初に各国現地通貨建ての金額を1998年と2008年について調べ、その間の倍率を見たものだ。
ドル建て表示を使わなかったのは、為替相場変動の影響を排除したいことと、国防予算とは各国政治過程が生み出すもので、どの国であれ、現地通貨建て以外で予算を組まないこととの2点による。
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