アドテック東京2011リポート最終回は、10月28日に行われた3つのキーノートプレゼンテーションを紹介する。

紙の発行部数に迫るFT.com有料会員数

 フィナンシャル・タイムズ紙「FT.com」マネージングディレクターのロブ・グリムショウ氏と、日本経済新聞社デジタル編成局長 野村裕知氏という、日・英を代表する経済紙のデジタル部門のトップを迎えたプレゼンテーションは参加者の大きな関心を集めた。モデレーターは電通の片山直子氏。

FT.com ロブ・グリムショウ氏
(撮影:前田せいめい)

 まず、グリムショウ氏が「FT.com」の概要を紹介。同紙は2001年からネット上での課金購読サービスを開始している。現在、紙の発行部数35万部に対して、デジタルの有料会員数が24万8000人にまで増えているという。グリムショウ氏は「デジタルの購読者が紙媒体に迫る読者を獲得するのは世界に例を見ないことだ」と述べた。

 購読者数の増加で広告ビジネスにもメリットが生じている。デジタルの購読者の職種や肩書きなどのデータに応じて、非常に高度なターゲット広告を打つことができるからで、イノベーティブなツールの開発も可能になったという。

 グリムショウ氏は「この業界にとってモバイルは将来の方向性でもある」と断言。「FT.com」のページビューの20%はタブレットやスマートフォンから来ており、コアユーザーの30%はタブレットやスマートフォンを使ってニュースを見ている。ページビューの中でモバイルが占める割合は5割まで増加している。「ニュースは即時性が重視されるので、モバイルのデバイスでアクセスしやすくすることで、ニュースの強みを生かすことができる」と強調した。