「週刊NY生活」11月5日 371号より
オリンパスによる企業買収を巡る問題で、米連邦捜査局(FBI)と米証券取引委員会(SEC)が調査を開始し、捜査線上にニューヨークで投資コンサルタント会社を営んでいた2人の日本人の存在が浮かび上がってきた。
580億円はどこへ FBIがオリンパス買収疑惑に着手 捜査線上にNYの2邦人
10月24日付ニューヨークタイムズ紙はこの2人を実名で報じ、2008年の英医療機器製造会社ジャイラスの買収においてオリンパスが2人が経営する投資コンサルタント会社アクシーズ・アメリカへ業界平均の30倍以上、買収価格の36%に及ぶ6億8700万ドル(約580億円)に上る巨額のコンサルティング費用を報酬として支払っていた。
マンハッタンのグランドセントラル駅に隣接するグレイバービル内とコネチカット州スタンフォードに拠点を構えていたアクシーズ・アメリカは、かつて野村証券に勤務し、その後はウォール街でキャリアを積んだ日本人が社長を務め、同じくウォール街の証券会社で働いていたもう一人の日本人が経営に携わっていた。
オリンパスによるジャイラス社の買収完了からわずか数週間後に閉鎖され、その当時同社が保有していたジャイラス社株は、同じくこの日本人が経営していたと見られるケイマン諸島登記のアグザム・インベストメンツへ譲渡された。
その後、2010年初めにジャイラス社株は6億2000万ドルでオリンパスへ売却されている。FBIは、巨額のコンサルティング費用がマネーロンダリングや不法行為に当たるのではないかとの視点から調査を行っている模様だ。
謎の報酬580億円 オリンパスの不透明買収問題 前社長FBIと接触
580億円もの巨額の報酬が2人の日本人が中心となって経営する無名に近い経営コンサルタント会社アクシーズ・アメリカに支払われていた。その会社は買収から数週間後に閉鎖され、同社の株は同じ社長が経営するケイマン諸島登記のアグザム・インベストメンツに譲渡された後、昨年6月に登録料未納により登記を抹消された。
アクシーズ・アメリカはその10年の歴史の中でウォール街では特に目立つこともなかったという。2人の日本人はともに連絡がとれない状態が続くが、元社長の米国人の妻はフロリダ州ボカラトンの自宅で夫の無実を10月24日付ニューヨークタイムズ紙で主張している。
不透明買収問題を指摘したことで前会長兼社長の菊川剛氏から解任されたマイケル・ウッドフォード前オリンパス社長が来米し、26日ニューヨークでFBIと接触し事情説明した。一方、東京本社の高山修一社長は、27日行った記者会見で「買収に伴う手数料は適切なものだった」と述べている。
企業統治の根幹を揺るがす問題で真相究明が急がれるなか、FBIやSEC捜査の行方に注目が集まっている。
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