1ドル=75円台前半まで進行した円高。2011年4月段階で円相場は同85円台の水準にあった。半年あまりで10円も円高が進んだわけで、文字通りの「超円高」に他ならない。

 輸出主導の産業モデルの日本経済は今下期、減益ラッシュが必至だ。ただ、この超円高の定着は、減益だけにとどまらない巨大なインパクトを内包しているのではないか。

 その正体は内外価格差だ。超円高の定着がもたらす近未来を予想してみる。

このまま超円高が定着するのは必至

 10月31日、政府、日銀は約3カ月ぶりに円売り・ドル買いの市場介入に踏み切った。1ドル=75円台前半まで円高が進行した直後であり、この水準が破られれば、オプション取引などの副作用により、同70円台に向かって市況が急伸する懸念が高まったためだ。

 同日は介入によって市況が一気に4円も急落した。だが、政府、日銀の単独介入の効果は乏しく、その後、円相場はじりじりと値を戻す展開が続いた。

 欧州の金融危機を巡るEU各国の足並みの乱れ、欧州金融機関への不信感など、ユーロが上向く材料は皆無の状態だ。米国に目を転じても、景気低迷が長期化し、追加金融緩和(QE3)の実施はほぼ確実視されている。

 信認を完全に失ったユーロ、一段の金利低下が確実なドル。相対的に最も悪材料のない円が選ばれてしまうのは、小学生でも理解できる構図だ。

 「米欧金融当局ともに通貨安で急場を凌ぐしかなく、日米欧3極による協調介入は限りなく不可能な状況」(国際金融筋)だという。日本が単独介入をしても「急伸」を食い止めるのみで、「緩やかな上昇」を阻止できなかった。もはや70円台前半の超円高の定着はほぼ規定路線となりつつある。

 日本経済新聞の集計によれば、2012年3月期の上場企業の連結経常利益は前期比10%超の減益が見込まれているという。東日本大震災、タイの大洪水など突発的な事象があったほか、円高の進行が企業の想定をはるかに超えたことが大幅減益の主因となったのは間違いない。