昨年末から米中関係の状況が変わったことは、改めて指摘するまでもない。2009年11月のオバマ訪中までは、米中が世界の流れの中心になるという「G2」論が幅を利かせていた。だが、いまや米中対立の局面が強調される。

 振り返れば、2009年9月に、米国が中国製タイヤに対してセーフガードを発動したことが対立の嚆矢だったようにも思える。

 もちろん底流には、中国が人民元の対ドル為替レートを低く抑えたまま、基本的に固定(ペッグ)してきたことに対する米国の不満がある。

 しかし、世界的な経済不況下でひとり高度成長を維持してきた中国はまさに世界経済の牽引車であり、米国企業もその恩恵に与ってきたことは否定できない。中国が米国債を買い上げてドルを米国に還流してきたことも、米国経済を買い支えるという意味で中国の米国に対する大きな貢献と言えた。

 だから、中国の巨大な対米貿易黒字に代表される通商問題は、くすぶり続けながらも発火することは抑制されてきたと言える。

今年に入って明らかに対立局面を迎えた米中

 しかし、今年に入り、台湾への武器供与問題、サイバー攻撃に絡むグーグルの中国からの撤退問題、チベット問題をめぐるダライ・ラマとの会見問題などが一斉に発生したことで、米中は明らかに対立局面を迎えることとなった。

 これらの問題は、中国側から見れば「内政干渉」の案件としてひと括りにされる。一方、米国側から見れば、グーグルの問題は、中国政府による「検閲」をよしとしない「言論の自由」の問題であるし、ダライ・ラマ会見は「信教の自由」の問題であり、そうした自由を保障するデモクラシーを建国の理念とする米国にとっては「譲れない問題」となる。

 ただし、そうは言ってもグーグルの問題は巨大化する中国市場を一企業がビジネスチャンスとしてどう見るかという経営判断に委ねられる性質のものだし、ダライ・ラマ会見にしても、米国がチベットの中国からの分離・独立を支持する話には到底なりそうにないとすれば、適当なところで妥協が可能な問題だと言えるだろう。