ヒマラヤ山脈を望むネパール。地球に残された数少ない秘境だが、IT革命の恩恵を受けて山村の生活も劇的に向上した。元教師のマハビール・プンさん(55)が個人事業で導入した無線インターネットが、今や地域住民の生命と安全を守る「命綱」として大活躍している。(AFP提供以外の写真は筆者およびマハビール・プン氏提供)
プンさんは1955年、ネパール第2の都市ポカラに近い山村で生まれた。地元の学校で教職に就いたが、故郷の貧しい医療や教育は一向に改善しない。そこで米国留学を決心し、3年間にわたり地域開発や環境保全を学ぶ。92年、ネパールにUターンした後、非営利組織(NPO)で働き始めた。
「貧困の元凶は通信インフラにある」――。プンさんはこう確信した。都市と山村の間をインターネットで結び付けたいと願い、2000年に事業化調査を開始。当時、ネパールの村ではNPO関係者が電子メールを確認するため、「毎月1回下山してはメールを確認する生活を送っていた」。
1993年、プンさんと彼の友人は私財を投じ、プロジェクト「ワイヤレス・ネパール」をスタート。光ファイバーなどを敷設するのは不可能だから、無線インターネットにかけた。
「無線ネット革命」起こしたマハビール・プンさん(筆者提供)まず、ある村とポカラを遠距離ワイヤレス通信によって接続。その村を中継地点として別の村を結び、さらに村、村、村・・・。リレー競走のような無線ネットワークが出来上がり、今ではおよそ65の村でインターネットが利用できる。山間のため通信環境はよくないが、それでも最長約34キロの無線通信を実現している。
やがてプンさんの献身的な取り組みに、国際社会が注目する。国際電気通信連合(ITU)やアジア工科大学院(AIT)、慶應義塾大学など海外の研究機関が支援の手を差し伸べ、無線ネットを活用した村民サービスの研究開発を共同で進めている。
歩いて病院まで1~2日→テレビ電話で遠隔診察
無線ネットの稼働状況を確認する筆者(左)とプンさん(筆者提供)無線ネットの出現に伴い、ヒマラヤ山麓の村民生活はがらりと様変わりした。
最も成果を上げているのは、遠隔医療と遠隔教育である。人々が体調を崩しても、村に医者はいない。治療が必要な場合、1~2日かけて都市の病院まで歩いて行く。このため、かえって途中で容態が悪くなるケースも少なくない。
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