今週は、オリンパスの外国人社長解任をめぐる疑惑を扱ったフィナンシャル・タイムズ紙(FT紙)の記事が、断トツの1位となった。

 先週末の14日、日本の新聞各紙にオリンパスのマイケル・ウッドフォード社長の解任を報じる記事が並んだ。

日本経済新聞
オリンパス菊川会長「文化の壁越えられない」ウッドフォード社長解職
オリンパス菊川会長「ウッドフォード氏は独断専横的」

朝日新聞
オリンパス、英国人社長を解任=在任半年で。経営手法食い違い

読売新聞
「日本人と違った」…オリンパスが社長を解職

 どれも、ウッドフォード社長が日本の企業文化を理解できず、自分のやり方を押し通そうとしたことが原因という筋書きで、菊川剛会長の会見をそのまま報道している。

 対して、FT紙ウェブ版の第1報は、ウッドフォード氏がオリンパスの企業買収に関する疑惑を示唆したというもの。

 週明けの17日にJBpressが掲載したFT紙の解説記事では、英国の医療機器メーカー買収に絡んだファイナンシャルアドバイザーへの多額の支払いや、国内企業3社の買収に法外な金額を支払ったことをウッドフォード氏が追及しようとしたことが菊川会長らとの衝突を招き、突然の解任になったことが分かる。

 『ずばり勝負』先週のゲストの田原総一朗氏も、日本のマスコミの弱腰、批判精神のなさに苦言を呈していたが、日本の新聞とFT紙のこの違いはどうしたことだろう。

 日経は、20日付で「オリンパス解任騒動、海外メディアが相次ぎ続報」という記事を出しているが、これでは全く他人事のようだ。

 日経グループの場合には、「日経ビジネス」を発行する日経BP社の辣腕副社長だった方が、今年の6月からオリンパスの社外取締役になっている。

 それ自体、別にとやかく言うことではないが、オリンパスの事件と時を同じくして、私たちは日経ビジネスの局長と話をする機会があった。私はその内容を「JBpressへの宣戦布告」だと受け止めた。私たちが無料で高品質な記事を提供しているのが気に食わないのだろうか。

 だとすれば、週明けの日経ビジネスが楽しみだ。恐らく月刊誌であるFACTA以上の調査報道がなされているのだろう。調査報道の権化との触れ込みで前金で驚くほど高い購読料を取っているのだから。

 万が一優れた調査報道は望めなくとも、少なくとも同誌の名物コラム「敗軍の将兵を語る」で菊川剛さんのお話が読めるに違いない。

 そうでなければ、無料で日本のためになるコンテンツを供給しようという私たちに「宣戦布告」する自信の根拠は、官僚国家日本とメディアの癒着に求めるほかはない。来週が楽しみである。

 原発事故や小沢一郎氏をめぐる報道姿勢に対し、「マスコミは大企業や政府・当局の広報機関だ」という批判が高まっているが、この批判を覆せるような意識改革ができるかどうか。オリンパスの一件を見ても、悲観的にならざるを得ない。

【訂正】 記事公開当初、タイトルを「あのオリンパスに『日経ビジネス』が社外取締役」としましたが、「日経ビジネス」を発行する日経BP社から事実と異なるとの指摘を受け、修正しました。また、より正確に内容を表現するため、サブタイトルと本文の一部表現を修正しました。(2011年10月25日)