1年を大きく乾季と雨季に二分する熱帯モンスーン気候に属するカンボジア。雨季も本番に差しかかった去る5月31日、精密小型モーター業界において世界トップシェアを誇る日本電産の社長であり、辣腕の企業買収プレイヤー、カリスマ経営者で知られる永守重信氏が、カンボジアを電撃訪問した。
日本電産の永守社長がカンボジアを電撃訪問
フンセン首相との会談では終始、積極的な議論が行われたとされ、特に業界他社との競争諸条件を意識した、進出意向とも釘刺しとも取れるやりとりがあったと、政府関係者の間では囁かれる。永守社長の何らかの本気度をカンボジア政府が感じ取ったことは、ほぼ間違いない。
「・・・私どもがお願いしている様々な恩典が取れた段階で、カンボジア進出を正式に決定したいと思っており・・・」
永守社長のカンボジア訪問に先立つ、昨年2010年10月2日。小型ボールベアリングで世界市場6割以上のシェアを持ち、連結売上高約2700億円(2011年3月期)の規模を誇る大手メーカー、ミネベアの2011年3月期第2四半期の決算発表会が行われた。
ミネベアは同発表会において、カンボジアにおける小型モーター工場の建設について言及。その後10月27日には日本経済新聞朝刊に、投資額50億円、最大雇用5000人の工場進出として取り上げられ、12月17日にはカンボジア工場進出の正式発表に至った。
一連の動きは、業界の雄2社による小国カンボジア進出という歓迎すべきホットトピックとして、また風聞ベースとはいえ同小国をめぐる競合企業のさや当て話として、カンボジア関係者の興味を引き続けている。
カンボジアを走る自動車の8割はトヨタ車
年間200万人を超える観光訪問客を引き寄せる、世界文化遺産アンコールワット。カンボジアが仏教国となる以前の12世紀前半、アンコール王朝のスリヤヴァルマン2世によって30年以上の年月をかけて建立されたこの巨大なヒンドゥー教寺院は、かつて王都であったカンボジア北部地方シェムリアップに位置する。
同地方にある東南アジア最大の淡水湖トンレサップ湖を源流とするサップ川は、首都プノンペンの東沿いを流れ、首都の目抜き通りが貫く中心地にてメコン川と合流し、そのままベトナムに抜け、南シナ海に至る。
そのサップ川にかかる、プノンペン中心地北側にある大型橋梁は「日本カンボジア友好橋」の名前で広く一般市民にも知られ、その橋や街を行き交う自動車の約8割はトヨタ自動車製である。
中国製・韓国製の民生製品が大量に流入する中でも、日本製品に対する信頼・人気はいまだ底堅い。カンボジア政府および国民が抱く日本に対する好印象・信頼感は、東南アジア諸国の中にあっても際立って高い。