グーグルが「中国撤退」の可能性に言及してから早くも1週間が過ぎた。グーグル中国に対する組織的ハッキングの話は、瞬く間に中国における言論の自由に関する崇高な議論にまで昇華し、今もネット上では活発な討論が続いている。
それ自体は結構な話であるが、この問題の本質は「中国における人権問題」ではない。米中サイバー戦争は既に始まっているだけでなく、現在新たな段階に突入しつつある。今回は、この銃弾も戦闘機も使わずに戦う「米中戦争」の一端をご紹介したい。
グーグル中国に何が起きたのか
まず、事実関係から整理しておこう。
巷の風評によれば、本年1月12日、グーグルは自社システムに対する中国政府のサイバー攻撃に抗議し、グーグル中国の自主検閲を停止するとともに、中国ビジネスから撤退する見込みだとされている。一体グーグル中国に何が起こったのだろう。
いろいろ追加報道はあるが、いずれも憶測の域を出ない。グーグル関係者は中国政府によるサイバー攻撃の詳細を一切明らかにしていない。唯一信頼できるソースであるグーグル公式ブログの内容も、以下のとおり、実に素っ気ないものだ。
(1)2009年12月中旬、グーグルは高レベルのサイバー攻撃を受け、知的所有権の一部に損害を受けた。
(2)中国政府による一連の攻撃の目的は中国の人権活動家のGmailアカウントにアクセスすることにあったが、被害は比較的軽度であった。(中略)
(3)グーグルとしては、中国におけるビジネスを見直す必要があること、および、グーグル中国の検索結果に対する検閲の継続を望まないことを決定した。
(4)今後数週間、中国政府と検閲のない検索エンジン運用の可能性につき中国政府と話し合うこととなるが、このことがグーグル中国と中国事務所を閉鎖せざるを得なくなることを意味し得ることは認識している。(We recognize that this may well mean having to shut down Google.cn, and potentially our offices in China.)
要するに、グーグルは現在も、中国における「検索結果の自主検閲」をやめたか否か、中国ビジネスから撤退するか否かについて一切明らかにしていないのだ。しかし、このようなグーグルの煮え切らない態度にもそれなりの理由があるに違いない。