11月に中国を訪問したオバマ米国大統領は、宿泊先の北京のホテルで「南方週末」という中国の地方紙の単独インタビューに応じた。

 だが、政府の新聞出版署はインタビュー記事を検閲し、全文の掲載を禁止した。インタビュー記事は当局の指示で大幅に圧縮させられたため、新聞紙面には大きな空白スペースができていた。

 今回の訪中でオバマ大統領は、上海の大学生に自らのアジア戦略を語りかけ、大学生からの質問にも答えた。そのフランクな対応に、中国では、にわかにオバマブームが沸き起こった。

 そうした状況を見た共産党宣伝部は、メディアに対して、オバマブームを煽るような報道を取りやめるよう、異例の通達を出した。

 しかし、中国の「憲法」第35条では、「中国の公民は言論、出版、集会、結社、デモ行進、抗議の自由を有する」と定められている。新聞出版署の記事掲載禁止処分と、共産党宣伝部の報道取りやめ勧告は、いずれも明らかに憲法違反と言わざるを得ない。

 現状の中国の憲法では言論の自由が保障されているが、それ以上の詳細な規定はない。そのため、報道するメディアにとっても、報道を規制する側にとっても、すべてが手探りの状態である。

 現状の報道のあり方を改善するポイントは2つほどある。1つは、報道する側がルールと倫理を守って報道することである。節度がなく社会不安を煽るような報道は、どこの社会でも許されるものではない。もう1つは笛を吹いて報道を規制する側も、ルールに則って規制しなければならない。