9月2日、中国の対リビア外交が破綻しかねない深刻な事態が発生した。カナダの日刊紙グローブ・アンド・メールの記者がバーブ・アッカラというトリポリ近郊の高級住宅街でとんでもない機密文書を発見したからだ。今回はこの極秘書類が示す中国の「二枚舌」外交の醜さについて書いてみたい。

中国企業との秘密商談

中国企業がカダフィ政権末期に武器売却交渉

リビアの首都トリポリ近郊でカダフィ政権部隊の軍事訓練に参加する女性〔AFPBB News

 記事の概要は日本語でも報じられている。中国の国営軍事企業3社が本年7月、対リビア武器禁輸を定めた国連安保理決議に違反し、当時のカダフィ政権関係者と少なくとも2億ドルもの秘密武器取引を行っていたというものだ。

 9月5日、外交部の姜瑜報道官は定例記者会見で、「中国企業が直接・間接にリビアに武器などを売却したことはない」と全面否定した。

 さて、一体どちらが正しいのか。迷ったらオリジナルを読むのが、筆者のやり方だ。幸いカナダ紙が入手した文書はオリジナルがアラビア語なので、早速検証してみた。これでも30年前、筆者はアラビア語を学習したことがあるのだ。

 リビア政府公式レターヘッドの付いた2011年7月31日付の同文書は、リビア軍「技術局」ロケット・砲兵部がリビア政府の「生産供給庁」長官宛に提出した出張報告書のようだ。

 全体で6ページあり、リビア軍の代表団が7月に訪中した際の中国企業とのやりとりが詳しく書かれている。要旨は次の通りだ。