南欧諸国の財政危機を発端に、世界の金融市場が混迷の度合いを深めている。米国の財政問題とも併せ、今般の世界的な混乱は史上最大の危機と言っても過言ではない。

 こうした状況下、一部の欧州諸国が危険な措置を講じた。「金融株の空売り禁止」がそれだ。かつて日本も導入した経緯があるが、効果は限定的だ。世界的な金融危機の再燃は日本にとっても対岸の火事では済まされない。

市場を知らない「役人の発想」

 「洋の東西を問わず、市場を知らない役人の発想だ」(外資系証券ディーラー)

 8月12日、EU加盟国のうち、フランス、イタリア、スペイン、ベルギーの4カ国は銀行や証券など金融銘柄について、空売り禁止措置を講じた。

 その理由は、ギリシャなど財政問題が深刻化している南欧諸国の国債を各国の金融機関が大量保有しているためだ。

 南欧の国債がデフォルト(債務不履行)の危機に瀕する中で、万が一のことが起これば、大口投資家である金融機関の経営を直撃することになる。

 ここ数カ月の間、EU加盟国の金融株は下落ピッチを速めてきたが、7月あたりから右肩下がりの角度はより鋭角的になった。規制が導入される直前の8月10日、仏ソシエテ・ジェネラル株が20%超急落したほか、BNPパリバ株も13%値を下げた。

 金融株の下落が確実視される中、「手をこまねいているディーラーなどいない」(同)。

 経営環境の悪化を悲観した売りが出たことに加え、先のディーラー連のように空売りを通じて収益を得る動きも加速し、金融株の値下がりに拍車がかかったのは間違いない。

 EU全体が面子をかけて財政危機に瀕する南欧諸国の「資金繰り」をサポートしている最中だったため、先の4カ国は空売り禁止という措置に出たわけだ。