10月1日の建国60周年記念式典で10年ぶりの軍事パレードが行われた。52種類もの新型国産主要装備を見せつけられ、内外メディアは人民解放軍の近代化に大いに注目した。だが、我々が真に懸念すべきは新型ICBM(大陸間弾道ミサイル)でも、巡航ミサイルでもない。

 軍事に詳しくない中国専門の記者はミサイルの射程など攻撃能力の向上ばかり書いている。しかし、日米の軍事専門家は正面装備よりも、中国軍の戦略の変化、戦術の高度化、統合運用、訓練、通信など解放軍部隊の実際の作戦能力に関心があるはずだ。

進化する中国の軍事戦略

【図解】中国の最新鋭兵器

中国の最新兵器〔AFPBB News

 今から5年前、スイスのジュネーブで面白い元米国防総省関係者に出会った。中国語を流暢に操り、中国古代史に精通し、孫子の兵法を英語で語れる男だった。対中強硬派として一部では有名なこの米国人、歴史を語りつつ人民解放軍批判を国際会議で繰り返していた。

 彼だけではない。まだ少数派ではあるが、ワシントンには中国人民解放軍の戦術能力の急速な向上に強い懸念を抱く人々がいる。もちろん、人によって重点は若干異なるが、論点は概ね同じだ。ここで、彼らの主張をまとめてみよう。

1.防衛戦略目標の拡大

中国海軍創設60周年で国際観艦式、国産原潜も初公開

中国海軍が誇る原子力潜水艦〔AFPBB News

 従来から中国は台湾の「武力解放」を放棄していないが、現在の人民解放軍の軍事戦略は台湾防衛にとどまらない。最近では日本の伊豆諸島から、小笠原諸島、グアム、サイパン、パプアニューギニアまでの海域を防衛ラインと定めているようだ。

 これは一般に「第2列島線」と呼ばれている。1982年に人民解放軍の最高意思決定機関である中央軍事委員会の幹部が打ち出したものらしい。2020~2040年までに、米海軍による太平洋、インド洋の独占的支配を阻止するという壮大な海軍増強計画だ。