「企業のフェイスブックページのブームは今年いっぱい」と予測するのは、エイベック研究所の武田隆氏。彼の言葉の裏には、「企業コミュニティ」の仕組みを累計300社に導入し、いくつもの成功事例を作ってきたという自信が窺える。
学生ベンチャーとして15年前に起業し、企業の自社メディアをソーシャルメディア化する新しいマーケティング手法を開拓してきた武田氏に、企業と顧客の関係に起きている変化やソーシャルメディアマーケティング先進企業の取り組みを聞いた。
企業のファンが集まるコミュニティがマーケティングの力になる
川嶋 武田さんが最近出版された『ソーシャルメディア進化論』のタイトルは、梅田望夫さんの『ウェブ進化論』を意識していますか?
武田 この本の謝辞にも書いたのですが、『ウェブ進化論』は「グーグルって、いまひとつ正体がはっきりしないよね」という時代に、グーグルがもたらす新しい潮流を明示した。今はソーシャルメディアって一体何なの? と悩んでる方が多いので、僕はそこに答えようと。ウェブ進化論へのリスペクトを込めています。
川嶋 武田さんの会社、エイベック研究所ではソーシャルメディアを仕事にしているわけですか?
武田 ソーシャルメディアを企業に提供することを専門にやっています。具体的には私たちのシステムを導入してもらって、各企業のホームページにファンクラブを作る。するとそこにファンが集まってきて、「コミュニティ」ができる。そこでの発言はデータベース化されますから、だれがクチコミリーダーかが分かります。
例えばレナウンのダーバンコミュニティでは、クチコミリーダーに新作コートを渡す。彼がそのコートについて書き込むと、情報がクチコミで広がるんです。また、そのクチコミの発言の一つひとつがグーグルやヤフーの検索に引っかかって、外から見にやって来る人たちもいる。
ドールバナナの自社コミュニティではクチコミで集まったレシピを店頭POPに展開する計画です。バナナは大量流通で安ければいいというようなイメージですが、こうしたファンの声を店頭POPに使うと、小売りの現場が温かくなるんですよ。
川嶋 従来メディアの第三者的な情報ではなく、ファンの声を集めたコミュニティが媒体になって情報が伝わっていくということですね。ファンが韓流スターの追っかけのように企業を盛り上げるという状況が起きているのがおもしろい。
武田 今までもファンはいましたが、ひとりのファンを満足させても、その人の満足度以上に広がらないからマスの広告宣伝の方がよかった。
でも今はソーシャルメディアのおかげで、ひとりの顧客の影響力が爆発的に上がっています。1000人のスペシャルアクティブ層とつながるとそれが同心円状に広がって100万人につながる。