日本のメディアはあまり報道しないが、WHO(世界保健機関)は携帯電話を「発癌の可能性がある」物質に指定した。

 WHOの付属組織、IARC(国際癌研究機関)が、世界13カ国の約5000人について、携帯電話の使用歴と脳腫瘍の発症率を調べた結果によると、携帯電話の利用者は、脳腫瘍の1つである悪性の「神経膠腫」のリスクが40%上昇することが分かった。

 これは発症率が10万人あたり数人のまれな病気で、それほど心配する必要はなく、発癌性は5段階評価のうち3番目の「2B」だ。しかしこれまでにも、携帯電話と脳腫瘍の因果関係については世界で多くの調査結果が出ている。

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は「10年以上の携帯電話利用者は聴神経の腫瘍を発症するリスクが3.9倍になる」と発表した。イギリス王立協会では電磁波と健康についての国際会議が開かれ、20代では携帯利用者の神経膠腫の発症率は5倍になるという調査結果が発表された。

 また脳腫瘍のうち耳にできる「聴神経鞘腫」については、日本の研究グループの分析結果で、1日20分以上通話した人に2.74倍のリスク上昇が見られた。テルアビブ大学は、長期の携帯電話利用によって「耳下腺腫瘍」の発症率は1.5倍になるという調査結果を出し、米上院の公聴会でも発表した。

 総務省は「日本の研究では影響はない」という見解を発表したが、ドイツ政府は「長期的な影響や子どもへの影響については可能性を排除できない」とし、スウェーデン政府も通話中は電話機を体から離すことを推奨している。

微量放射線の影響は証明されていない

 他方、毎日メディアが大騒ぎしている、原発から出る放射線の発癌性はどうだろうか。もちろん原爆で大量に被曝したら死亡するが、微量の放射線については、はっきりした証拠がない。

 放射線医学の権威である近藤宗平氏によれば、200ミリシーベルト(mSv)以下の被曝量で発癌性が増加したという調査結果はない。微量の放射線の影響は癌にかかる確率が上がるだけなので検出がむずかしいだけでなく、人体は傷ついた遺伝子を補修する機能を持っているからだ。