7月末、欧州の最貧辺境国モルドバに、中国が巨額の借款を与えると約束した。インフラ整備の資金と称して、その額10億ドル。しかもこれはあくまで当初供与額で、先行報道によればクレジットライン(与信枠)は必要に応じ拡大し得るという*1。
10億ドルとは、あいた口がふさがらない。
国家歳入半年分の巨額借款

総人口は400万人足らず、就労人口は133万人程度でその4割は農民だというモルドバにおいて、GDP(国内総生産)はやっと62億ドル(名目為替相場換算値)に過ぎないからだ。ちなみに国家歳入規模は、20億ドルに満たない*2。
だから借款額は、モルドバGDPの実に16%強、歳入のほぼ半年分に相当する。
これを15年払い、利率は固定で3%、当初5年(3年との報もあり)は利払い無用という「グラントエレメント(無償供与部分)」たっぷりの好条件で与えようという。
昨今中国の借款につきまとう批判を意識してであろう、このカネでオリンピック級の陸上競技場を建てたり、道路を敷き、水道を整備したりする際、その労働力として9割方は現地のモルドバ人を雇うとか。そんな言質も中国側はモルドバに与えている。
なんにもないモルドバ
モルドバには目ぼしい資源が何もない。ウクライナとの国境周辺、ドニエストル川沿いの分離独立派が支配する一帯(Transnistria)には、自動小銃AK47カラシニコフという悪名高い“輸出商品”がある。けれどもモルドバがよその国に売れるのは、「人間」しかないと言われるくらいだ。
CIA World Factbookの統計によると、モルドバの人口は純減中(2009年推定で前年比マイナス0.079%)。雇用機会を求めて国外に移り住む人が多いのであろう。モルドバはまた、女性を含む人身売買の供給源としても知られる。労働者や売春婦として国外で働く彼らの郷里送金くらいしか、モルドバには外貨獲得の手立てがない。
*1=ウェブ・ベースのmoldova.org本年2月9日付け報道
*2=このパラグラフに用いた数字、CIA World Factbook、同国の項から。地図も同様
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