7月1日、胡錦濤総書記は中国共産党創立90周年を祝う会合で重要講話を行った。よほど重要な演説なのだろう。中国では「胡錦濤総書記による7.1重要講話精神の学習を貫徹しよう」と題する専用サイトまで作られた。今頃、共産党中堅幹部たちは徹底的に「学習」させられていることだろう。

中国共産党90周年、胡主席が汚職撤廃を訴える

7月1日、中国・北京の人民大会堂で行われた中国共産党の創立90周年記念式典で演説する胡錦濤国家主席〔AFPBB News

 「腐敗と戦わなければ共産党は人民の支持を失う」などと、日本でもこの重要講話の内容の一部は報じられている。

 だが、原文は漢字で1万4000字以上もあり、すべて読み終えるのに72分かかる。専門家を除けば、日本でこの演説全文をじっくり読んだ人がいったい何人いるだろう。

 こう考えると、へそ曲がりで浅学非才の筆者に俄然やる気が出てくる。内容的には新味のない演説だが、この際だから原文を精読してみることにした。今回と次回はこの7.1重要演説なるものの一体どこが「重要」かについて真面目に学習してみたい。

中国株式会社の90年

 1921年7月、ロシアに本拠を置くコミンテルンの主導で創立された中国共産党は陳独秀、毛沢東など社員数わずか57人程度の一種の合名会社だった。その後、国民党との企業提携と熾烈な競争を経て、1949年にようやく大陸における独占商権を確立する。

 1950年代は毛沢東という代表社員の下で、経済原理を無視した事業展開(大躍進)を図ったため経営が傾き、毛沢東は権威を失墜していく。60年代半ば、実権喪失を恐れた毛沢東は社風刷新運動(文化大革命)を進め、ライバル(劉少奇)を失脚させる。

 かくして毛沢東の個人企業と化した中国株式会社は1966年から10年間、熾烈な社内派閥抗争に明け暮れるようになり、経営は益々悪化していく。こうした状況は中国株式会社の初代オーナー会長である毛沢東が死ぬ1976年まで続く。

 1970年代末に中国株式会社を立て直したのが2代目会長・鄧小平だ。

 鄧の強力な指導の下、経済的合理性を無視した社訓は大幅に書き換えられ、「国民党」に似た開発独裁型市場経済システムが採用された。中国株式会社の経営もようやく軌道に乗っていく。

 この長老独裁型経営に対し80年代末に若手社員が反旗(天安門事件)を翻した。若手社員の勇敢な抵抗は、経営の第一線から退いていたはずの長老(鄧小平)の鶴の一声で、ガードマン(人民解放軍)により徹底的に排除されてしまう。