温家宝首相が6月24日から28日までハンガリー、英国、ドイツを訪問した。日本のメディアはあまり大きく報じていないが、最近「中国株式会社」はギリシャの債務問題が燻る欧州において着々と影響力を拡大しつつあるようだ。これが今回のテーマである。
欧州に対する手土産
6月28日、温家宝首相はアンゲラ・メルケル独首相との共同記者会見で、中国は「欧州を信頼しており、困難があれば救いの手を差し伸べる」と語り、ユーロ圏諸国の国債購入などを通じて欧州を支援する用意があると述べた。
時代は変わったものだ。中国と欧州の出会いは実に不幸だった。中国人なら、清朝が1839年の第1次アヘン戦争に敗北し、42年に南京条約で香港を割譲して以来、欧州諸国が永く中国を蔑み、貶め、かつ蹂躙していたことを忘れるはずはない。
今回の温家宝首相の手土産は欧州にとって無視できないものだった。これまで報じられた同首相の関連発言などを以下に取りまとめてみよう。
●「中国は欧州国家債券市場の長期的な投資者であり、近年、ユーロ債券を数多く買い増ししている。今後とも従来通り欧州とユーロを支援していく」(6月25日、ハンガリー)
●「中国はハンガリーの経済成長に自信を持っており、一定額のハンガリー国債を購入する用意がある」(6月25日、ハンガリー)
●「相互投資を促すため、中国は国家開発銀行を通して、両国企業の協力プロジェクトに使うため、10億ユーロの特別融資をハンガリーに供与していく」(6月25日、ハンガリー)
●「中国は、2国間貿易が2015年までに200億ドル(約1.6兆円)に達するようハンガリーとともに努力していく」(6月25日、ハンガリー)
●英国と中国は14億ポンド(約1800億円)相当の商談を成立させるとともに、両国間の貿易を2015年までに1000億ドル(約8兆円)規模とする目標で合意。(6月27日、英)
●ドイツと中国は両国の貿易額を今後5年間で現在の1300億ユーロから、少なくとも2000億ユーロ(2838億ドル)とする目標で合意。(6月28日、ドイツ)
●「必要なら、適切な規模でユーロ導入国の国債を購入する」「中独両国は計150億ドル以上の商談契約(柱はエアバスA320を62機購入、ダイムラーやシーメンスなどと中国企業との契約)を締結した」(6月28日、ドイツ)