「世界中のどこの不動産も、中国人にとってはもはや高いものではない」――。上海在住のある不動産投資家はこう豪語した。
「天井知らず」と言われるほど高騰した中国の主要都市の不動産価格について、「北京の土地を売ればアメリカも手に入る。上海も加えれば日独仏英も買える」と書き立てる中国メディアもあった。
一方で、現地投資家らは「これ以上は上がらない。このまま不動産を保持し続けるのは危険だ」と警戒感を表す。前出の投資家はすでに2010年に売り抜けており、その資金を海外資産に置き換えたばかりだ。
富裕層の間に高まる海外移住願望
2011年4月、北京で開催された不動産展示会に、4日間で13万人が来場した。報道によれば、20カ国の不動産企業が出展し、うち4割が海外の企業だった。人民元高も作用してか、期間中の予約件数は約1000件に上ったという。
中国では今、海外不動産の購入が一大ブームとなっている。
先頃、中国の招商銀行とベイン&カンパニーが「2011 中国私人財富報告」を発表した。これによれば、資産総額1000万元以上の「富裕層」が海外に資産を移しつつあり、海外移住願望が高まっているという。
さらに同リポートは、「不動産投資は2009年の17.9%から2011年は13.7%に下落した。90%以上の富裕層が、中国国内の不動産投資をこれ以上増やさないと回答している」と報告。また、「今後、資金は投資信託や海外不動産などに向かう」と指摘している。
興味深いのは、同リポートが調査対象にした富裕層の6割が「海外移住を検討中、もしくはすでに移住している」と回答している点だ。
かつての裸一貫で国を後にした貧しい移民のイメージは当てはまらない。彼らは一定の投資によってその国の永住権を獲得する「投資移民」というステイタスで海を渡る。中国人の投資移民は過去5年で実に73%も増加した。
中国人の海外移住先としてまず挙げられるのが、カナダ、オーストラリアである。高い教育水準と社会福祉の充実、さらにグリーンカードまで獲得できる点が人気となっている。