先日、都内某所で行われたある企業懇親会に、日本のものづくりを支える多くの経営者らが参加した。そのうちの1人は「中国企業による買収話が、私の業界でもいっぱい来ている」と打ち明ける。「来月、中国からの視察団を招聘する」というコーディネーターもいた。
中国の海外企業の買収はリーマン・ショックをきっかけに加速したが、東日本大震災もまた格好の機会となるのだろうか。
日本の技術欲しさに黒船のごとく押し寄せる中国企業に、国内では拒絶反応も見られる。八王子市の町工場の経営者は、「大企業の技術ならまだしも、町工場の技術にまで手を出されたら、日本は終わりだ」と危機感を隠さない。
中国企業による日本企業の買収は、2008年が13件、2009年が20件、2010年が26件(レコフデータベースより算出)と件数は少ないものの、徐々に増えている。
この中には、山東省の中国繊維大手である山東如意科技集団によるレナウンの買収や、中国大手自動車メーカーBYDによる金型大手オギハラの館林工場買収、マーライオンホールディングスによる本間ゴルフの買収などがある。
実は失敗に終わる買収があとを絶たない
実際は、中国企業による海外企業の買収は、まだ緒に就いたばかりだ。
中国では1980年代からエネルギー関連を中心に海外での企業買収が始まっていた。2000年代に入ると「走出去(海外に出る)」のスローガンとともに、企業の海外進出が動き出した。海外企業の買収総額は2002年で2億ドルだったのが、2008年には205億ドルと、直接海外投資の50%を占めるようになった。
2008年の金融危機は絶好のチャンスであり、2009年の中国企業の買収は案件数、金額ともに世界一となると見込まれていた。「2009年は中国企業の買収元年」と騒ぐメディアもあった。
しかし、蓋を開けてみれば意外にも失敗が目につく。交渉しても買収に至らなかったり、買収したものの業績が好転せず、結局は手放したりしている。中国企業が世界的に買収を仕掛けようとする産業は、主にエネルギー資源や先端技術を持つ製造業だが、中国では「失敗の歴史」と認識されている。中国のマスコミは、「約7割の企業は海外企業の買収が不成功に終わっている」と伝えている。