中国経済はインフレが続き、株価が低迷したままである。インフレ抑制のために政府は金融引き締め政策を実施しており、それに対する警戒が強まったことが株価低迷の原因だと言われている。
しかし、政府の政策は効果が薄く、市中の過剰流動性がほとんど吸収されていない。住宅バブルは依然として膨らんだままである。
金融引き締め政策が長期化すれば、景気後退が避けられない。政府と金融政策当局は「成長維持か、インフレ抑制か」というジレンマに直面している。
政府は、景気後退を避けるべく、金利の引き上げに代わって、ひたすら預金準備率の引き上げに終始している。だが、消費者物価指数は5%を上回り、預金金利(1年物)は2%にとどまる。実質金利はマイナスである。
家計にとり、金融資産は目減りする一方であり、金融資産を実物資産にシフトするインセンティブが強く働いている。この動きが、資産バブルの原因の1つになっている。
一方、景気が前年並みの成長を続けている中で、なぜか電力不足が叫ばれている。電力不足が本格化すれば、製造業に大きなダメージを与える恐れがある。
また、人件費の上昇も心配である。経済成長と共に人件費が上昇するのは当然の動きだが、沿海部の主要都市では、最低賃金は20%ずつ引き上げられ、労働集約型の製造業は中国を離れつつある。
中国経済は、まさに新たな局面に入りつつある。
中国でなぜインフレが再燃したのか
中国経済は引き潮を迎える可能性が高い。「人民日報」と「新華社」は相次いで社説を発表し「経済統計の変化に一喜一憂すべきではない」と指摘している。しかし、景気変動に一喜一憂しているのは、一般国民よりも政策当局の方のようだ。
物価の上昇が続けば、社会が不安定化するリスクは急上昇する。一方、金融引き締め政策が行き過ぎれば景気が後退し、雇用が深刻化する。どっちに転んでも難しい状況だが、二兎追う者は一兎も得られない。