ダイバーシティに最も大切なのは“経営トップの本気度”

 2014年にダイバーシティ推進の取り組みをスタートして以来、女性リーダーの育成や働き方改革にも重点的に取り組んできたHORIBA。その結果、過去5年で、女性課長相当職以上の割合は約1.6倍になり、有給休暇取得率も増加した。しかし、テレワークなど柔軟な働き方が浸透した影響などから、増加スピードが鈍化しつつあり、より計画的な休暇取得促進や、経営トップからの強いメッセージが必要とされている。

 森口氏は、「まだ道半ばではありますが、最初は働き方の柔軟性などの意識・行動改革といったところから、最近は働きがいやモチベーションを求める組織・風土改革へと変わってきています。若い世代は持続的な共生社会が実現できる未来を作りたいという強い思いを持っています。働きがいに関する対話を重ねる中で、HORIBAが成長し、存続することでより良い未来にどのように貢献できるのか、そんな気持ちを共有し、HORIBAで活躍することで結果的に社会のためになる、というのが理想です。その理想に対して現状はどうかということを、みんなでディスカッションする場となってきています。ダイバーシティ推進の活動を始めてから幾つかの通過点があり、ある程度こうなっていたいという目標に対して、ステップとして近づいてきているなという実感はありますが、歩みを進めるとまた違う課題が見えてきます」と、これまでの歩みを振り返った。

「ステンドグラスプロジェクト」の目下のゴール地点である2023年に向けて、森口氏は次のように指針を語る。「2023年以降は、推進室がなくても、ダイバーシティが当たり前に人事施策として現場に根付いている状態になっていないといけないという思いで現在活動しています。一企業の一部の社員の活動ではなく、社会全体で当たり前に取り組んでいかなければ本当の変革にはならないと思っています。短期的な目標達成のために、多様な人財の活躍に関わる育成や働き方など、その土台となる課題に向き合うことを後回しにしていると、必ずどこかで立ち行かなくなります。私たちの子ども世代やその次の世代には、ダイバーシティという言葉がなくなり、当たり前に多様性が生かされる社会になっていてほしいという願いがあります。次世代にバトンを渡すという意識を持って、社内だけでなく多くのステークホルダーの皆さんと一緒に取り組み、社会全体で前進していきたいと思います」

「ステンドグラスプロジェクト」のゴールイメージ
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 一定の成果を上げながらも、常に悩みは尽きないという森口氏。行き詰まったときは、“なぜ、ダイバーシティに取り組んでいるのか”という原点に立ち返るのだそう。「組織にはいろいろな考えや背景を持った方がいて、まさにダイバーシティですから、もちろん、新たな取り組みに対する抵抗感や無関心といった状態に悩むこともあります。そんな状況の中で何のためにやっているのかというと、やはり企業のサステナビリティなんですよね。多様な人たちにとって魅力的な企業であり続ける、イノベーションが起こりやすい状態にする、という信念を持って取り組めば、そのために何をするか、という方法論に違いがあっても乗り越えられると思います」

 さらに、ダイバーシティは経営課題でもあるため、経営トップの本気度が最も大切だと続けた。「信念を貫くには、経営トップの理解と支援が必須です。私たち担当者としても、常に新しい情報をインプットして。すぐに実現できることは多くはありませんが、“こういう理由から、これは今やらなければいけない”と、あきらめずに提案し、現場の思いを伝えるという、その原点を大事にしています。あとは、やっぱり対話。人それぞれ思いがあるので、いろいろな考えの方がいるということを理解して、あきらめずにコミュニケーションをはかることが大事ではないかと思います」

取材を行った堀場テクノサービス(堀場製作所のグループ会社)の本社ビル外観

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