西郷隆盛が揮毫した「敬天愛人」
歴史上にはさまざまなリーダー(指導者)が登場してきました。その中には、有能なリーダーもいれば、そうではない者もいました。
「開闢以來、世上一般十に七八は小人なれば」
維新の元勲・西郷隆盛の言葉を、旧出羽庄内藩の関係者が編纂・刊行しますが、それが『南洲翁遺訓』(以下、『遺訓』と略記)です。『遺訓』には、指導者として、人として何が大切なのかということが多く書き留められています。西郷は人材の採用の秘訣についても述べていますが、それは次のようなものでした。
先ず、西郷はこう言います。「人材を採用するに、君子小人の辨酷に過ぐる時は却て害を引起すもの也」と。人材採用の際、君子(人格が優れた人)と小人(小人物)との区別を余り厳しくし過ぎると、かえって害を引き起こすという意味です。その理由を西郷は「開闢以來、世上一般十に七八は小人なれば」と言います。天地が開け始めてから、世の中の人間の10人のうち7・8人は「小人」と西郷は語っているのです。
確かにそれはそうでしょう。大人物や君子が沢山いれば、好ましいことですが、世の中、自分も含めてそうではありません。だからといって落胆するのは早計です。西郷は「能く小人の情を察」することが大切と述べています。先ず、小人の心情を(上司などが)よく理解する。その上で、その「長所」をとり、これを下役として使う。そうすれば、才能・技芸を十分に発揮することができるというのです。小人であっても長所はあるので、それをよく見極めて、その人間の長所を発揮できる場に配属させよということでしょう。
しかし、大事なことは小人を重職に就かせないということです。幕末の水戸藩士で学者・藤田東湖は、西郷によると「小人程、才藝有りて用便なれば、用ひざればならぬもの也。去りとて長官に居え重職を授くれば、必ず邦家を覆すものゆえ、決して上には立てられぬものぞ」と述べていたとのこと。小人を重職に就けたら、国家を覆すような大事になるので、それは避けなければならないというのです。
小人が重職に就いたら、場合によっては本人も辛いでしょうし、何より多くの人々に迷惑をかけてしまうことがあるでしょう。それは避けるべきだと西郷や東湖は主張しているのです。






