写真提供:©Sheldon Cooper/SOPA Images via ZUMA Press Wire/Fotostand/DPA/共同通信イメージズ
業界地図を書き換えるような新しいビジネスモデルを実現するテック企業が世界を席巻している。その理由は何か。単なる技術革新があるからではない。ビジネス界の中枢で根底から常識を覆す「ギーク」(変わり者)が活躍しているからだ。『ギーク思考』(アンドリュー・マカフィー著/小川敏子訳/日本経済新聞出版)から一部を抜粋・再構成し、教訓的な事例を紹介する。
2012年にテスラが実現していたOTA(無線通信)による車載ソフトウエアのアップデートに、フォルクスワーゲンは2年以上苦しみ続けた。両社の明暗を分けたものは何だったのか?
スピード
――噓をつくことから学ぶことへ
『ギーク思考』(日本経済新聞出版)
最新の自動車を開発する際の最大の難所は、駆動系ではない。フォルクスワーゲンは身をもってそれを学んだ。
2015年、フォルクスワーゲンは電気自動車(EV)のためのプラットフォームをつくることを決定した*1。ガソリン車用のプラットフォームに変更を加えるのではなく、まったく新規につくるのだ。
言うまでもなく「モジュール式電動パワートレイン」プラットフォームの大部分はソフトウエアとなる。同社は2016年にパリ・モーターショーで電気自動車のコンセプトモデル「ID.」を発表した。ID.という名称には「インテリジェントなデザイン、アイデンティティ、ビジョナリーなテクノロジー」の意味が込められている*2。
2019年9月、フランクフルト・モーターショーでフォルクスワーゲンは完成品の新型電気自動車ID.3をお披露目した。ショーの終わりまでに、3万3000人以上が手付金を払うという人気の高さだった*3。生産は11月に開始され、最初の納品は2020年半ばの予定だった。
■ なぜかOTAアップデートができない
当初の開発スケジュールの約90%に達した頃、深刻な問題が生じているという情報が漏洩した。2019年12月、ドイツのマネジャー・マガジン誌は、少なくとも最初に製造された2万台のID.3はOTA(無線通信)でソフトウエアのアップデートができないと報じた*4。OTAアップデートは、2012年にテスラが実現していた*5。こうしてフォルクスワーゲン初の完全電気自動車は、OTAアップデートを可能にする修正版のソフトウエアを有線でインストールするために、完成後にも留め置かれた。
1 https://newsroom.vw.com/vehicles/the-electric-vehicle-module/.
2 “First Member of the ID. Family Is Called ID.3,”Volkswagen, www.volkswagennewsroom.com/en/pless-releases/first-member-of-the-id-family-is-called-id3-4955.(2023年3月2日閲覧)
3 Mark Kane, “Volkswagen ID.3 1st Reservations Hit 33,000,”InsideEVs, September 13, 2019, https://insideevs.com/news/370583/33000-have-reserved-volkswagenid3-1st/.
4 Michael Freitag, “Volkswagen Kämpft mit massiven Softwareproblemen beim ID.3,”Manager Magazin, December 19, 2019, www.manager-magazin.de/unternehmen/autoindustrie/volkswagen-ag-elektroauto-id-3-mit-massiven-softwareproblemen-a- 1301896.html.
5 Steve Hanley, “Volkswagen Has ʻMassive Difficultiesʼ with ID.3 Software, Previews ID.7 Bulli,” CleanTechnica, December 22, 2019, https://cleantechnica.com/2019/12/22/volkswagen-has-massive-difficulties-with-id-3-softwarepreviews-id-7-bulli/.







