SOMPOコミュニケーションズ社長 林祥晃氏(撮影:冨田望)SOMPOコミュニケーションズ社長 林祥晃氏(撮影:冨田望)

 米ギャラップ社の調査によると、職場で仕事への熱意や職場への愛着を示す社員の割合は、日本が主要国の中で最下位だという。その原因の一つと考えられるのが、日本企業に多くみられる組織内の同調圧力だ。しかし、2025年8月に著書『よい同調圧力を組織の武器にする』を出版したSOMPOコミュニケーションズ社長の林祥晃氏は、「悪い同調圧力をよい同調圧力に転換することで、社員のモチベーションを高め、自発的な行動を促せる」と唱える。組織を硬直化させる圧力のメカニズムや、挑戦を促す「よい同調圧力」を生むための方法論について、同氏に聞いた。

下位2割の人材も「可能性にあふれた原石」

──著書『よい同調圧力を組織の武器にする』では、一人一人が活躍できる組織づくりの方法論について解説しています。今回、どのような理由から「同調圧力」をテーマに選んだのでしょうか。

林祥晃氏(以下敬称略) 組織やチームのマネジメントを経験された方であれば、「2:6:2の法則(別名:働きアリの法則)」という言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう。組織においては優秀な上位の人材が2割、平均的な人材が6割、下位が2割という構成に自然と分かれる、という考え方です。

 しかし、この比率は「ある1つの価値基準で判断」した場合の話です。価値基準が変われば、別の価値基準では下位2割と考えられていた人材が上位2割に入ることもあります。

 人間は誰もが何かしらの個性や魅力を持っているものです。下位2割に属すると思われている人は、まだ個性や魅力を見出されていない「可能性にあふれた原石」といえるでしょう。

 こうした考えのもと、私は若い頃から「2:6:2の法則の打破」を目指し、一人一人のモチベーションを引き出す組織づくりを意識してきました。しかし、チームの規模が大きくなるにつれて、「全員のハートに火を付けられた」という実感を持てなくなっていきました。

 うまくいかない理由を考え、見いだした一つの原因が「同調圧力」です。組織は大きくなるにつれて、効率性を高めるためのルールや制度が増えていきます。そうした中で新しいチャレンジをしようとすると、“やっちゃだめ”という同調圧力が働き、「前例がない」といった理由で挑戦が阻まれてしまうのです。

 しかし、同調圧力も悪いものばかりではありません。うまく利用すれば、チーム全員と真の信頼関係を築き、メンバーのやる気を引き出すことも不可能ではないのです。そのための手法をメソッド化し、社会に広げたい、と考えたことが本書を執筆したきっかけです。