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日本企業が「変化に強い組織」に生まれ変わるには、何が必要なのか──。日本企業が抱える課題について「経営と人事が分断されたままでは、戦略の実行力は高まらない」と指摘するのは、元積水ハウス執行役員人財開発部長で現在は人事コンサルティングとエグゼクティブコーチングを提供するHR&B代表取締役の藤間美樹氏だ。2025年8月に著書『経営に参画する世界基準の人事 「戦略人事」が組織を根本から強くする』を出版した同氏に、組織の力を引き出す「戦略人事」の核心と、グローバル企業が取り組む戦略人事の具体策について聞いた。
日本企業が「マネジメント慣行」で世界最下位レベルになった理由
──著書『経営に参画する世界基準の人事』では、スイスのビジネススクールIMDが発表した「IMD世界競争力ランキング」のマネジメント慣行で日本が最下位レベルであると述べています。このデータを踏まえると、日本企業はどのような状況に置かれているのでしょうか。
藤間美樹氏(以下敬称略) 現在、社会情勢は急速に変化しており、企業はその変化に柔軟に対応していく必要があります。ところが日本企業では、社長が掲げる戦略が従業員まできちんと伝わっていないことが多く、その結果、変化に対する対応が遅れたり、適切な行動に結び付かなかったりするケースが目立ちます。
こうした環境変化に対応するためには、最前線で働くリーダーやメンバーが、自社の戦略を正しく理解していることが欠かせません。
──つまり、経営戦略の浸透が不十分であることが、マネジメント慣行の低さにもつながっているのですね。
藤間 そのとおりです。例えば、日本企業の会議では、事前に事務局が主要メンバーに根回しをして、波風が立たないような無難な提案にまとめてしまうことがよくあります。会議の前に結論が決まってしまっているため、会議中に本質的な議論がなされることはほとんどありません。
出された提案に対しても「自分の意見はある程度反映されているから、よしとしよう」という形で済まされてしまい、新しいアイデアが出てこないのです。
一方、海外では会議の場で徹底的に意見をぶつけ合いながら、最適な結論を導くスタイルが一般的です。そうした対話や葛藤を通じてこそ、新たな発想や改善の糸口が生まれます。これもマネジメント慣行の重要な要素の一つです。







