富士通 執行役員副社長CRO、コンサルティング担当の大西俊介氏(撮影:冨田望)

 事業環境が急速に変化する中、富士通は自らを「IT企業からDX企業へ」と再定義し、ビジネスモデルや組織構造の大規模な変革を進めている。その変革の要を担うのが同社執行役員副社長CRO(最高収益責任者=Chief Revenue Officer)の大西俊介氏だ。日本ではまだなじみの薄いCROは、従来の営業やマーケティングのトップと何が異なるのか。顧客企業に対してどのような責任を果たすのか。2025年6月に『CROの流儀』(日経BP)を出版した大西氏に、CROの役割について聞いた。

「売って終わり」ではなく「提供価値の最大化」に責任を持つ

──「CRO」という役職は、日本ではまだそれほど認知されていないと思います。富士通におけるその役割やミッションは何でしょうか。

大西俊介氏(以下、敬称略) 「CRO」は「最高収益責任者」と訳されるので、売り上げの最大化を担う「営業のボス」のようなイメージを持たれることが多いですね。しかし、富士通においてはその意味合いは異なります。

 現社長の時田(隆仁)は、社長就任後の2019年9月に発表した経営方針において「IT企業からDX企業への転換」を掲げました。私たちのビジネスはコンピューターのようなハードウエアを単純に販売するのではなく、「お客さまの課題解決を実現するためのソリューションを提供するものである」と宣言したのです。

 単にモノを売ればよいだけなら、売った後のことは考慮する必要がありません。ところがソリューションは、最終的にお客さまのビジネスにどれだけの効果をもたらしたのかが重要になります。私はそれを「提供価値」と呼んでいますが、この提供価値を最大化することが、結果として私たちにとっての「収益の最大化」につながると考えているからです。