「日本の中空均衡型モデルは、相対立するものを敢えて排除せず、共存し得る可能性をもつ」と指摘した心理学者の故・河合隼雄氏(写真右)写真提供:共同通信社
「ものづくり大国」として生産方式に磨きをかけてきた結果、日本が苦手になってしまった「価値の創造」をどう強化していけばよいのか。本連載では、『国産ロケットの父 糸川英夫のイノベーション』の著者であり、故・糸川英夫博士から直に10年以上学んだ田中猪夫氏が、価値創造の仕組みと実践法について余すところなく解説する。
多様な価値観や専門性を持つ人々を束ね、共創を導く──。プロフェッショナルマネージャー(PM)に求められる、技術や知識を超え、人間の「共通項」と「多様性」を見抜く力とは?
PMに求められる多様性への深い理解
創造性組織工学(Creative Organized Technology)は、「Mission(使命)」「Communication(組み合わせ)」「Experiment(試行・検証)」の3要素から成るMCEモデルを中核とした価値創造システムである。このMCEモデル(第20回を参照)を用いて、アドホックチーム(第4回)をペアシステム(第9回)で価値創造マネジメントする役割を担うのがプロフェッショナルマネージャー(PM、第7回)である。PMは、MCEモデルを組織内で機能させ、価値創造マネジメントをリードする存在である。
ここでいうPMとは、ハーバードビジネススクールの教授であるキム・B・クラークと経営学者の藤本隆宏氏が『製品開発力』(ダイヤモンド社)で提唱した「重量級プロダクトマネージャー」に相当し、トヨタの製品開発で用いられる「チーフエンジニア(CE)」とも重なる存在である。一般的には、「社内起業家」や「価値の創造主」と位置付けられる。
PMには、多様な人材をまとめ、Missionを羅針盤として組織を導く力が求められる。そのため、単なる技術や経営の知識だけではなく、人間の多様性への深い理解が求められる。






