日本ガイシ 執行役員 人材統括部長 野崎正人氏(撮影:川口紘)

 セラミック製品や特殊金属製品を製造する日本ガイシが、「第三の創業」として2021年に「NGKグループビジョン」を打ち出し、2050年に向け中長期的に事業ポートフォリオの転換を図ろうとしている。

 その中で同社は従来の人事制度を大きく刷新。「過去の貢献」から「未来の役割」への評価軸の転換、等級の複線化、ジョブディスクリプション(職務記述書)による職務の公開などに着手した。一連の人事制度改革の狙いとは何か。改革をリードした執行役員 人材統括部長の野崎正人氏に聞いた。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2025年6月13日)※内容は掲載当時のもの

人事制度の前に「企業文化」から問い直す

――日本ガイシでは、従来の人事制度を刷新し、2025年度に運用を開始しています。人事制度を改革することになったのは、どのような経緯があったからでしょうか。

野崎正人氏(以下、敬称略) 当社はNAS電池用セラミック、半導体製造装置用セラミックなどのセラミックを得意とするBtoB(企業間取引)のメーカーです。1970年代には自動車排ガス浄化用セラミックスなど、排ガス規制に対応したソリューションを足掛かりに大きく成長しました。現在でも、自動車の内燃機関の排気ガス浄化に関する製品が、売上の6割強を占めています。

 しかし、これからの自動車業界を展望するとEV(電気自動車)が中心となり、内燃機関向けの需要は減少していくことが想定されます。その社会変化を受け、将来の当社はどのような分野で社会に貢献していくべきかを考え、2021年に「NGKグループビジョン」を策定しました。

 当社にはこれまで、電力インフラをがいし(電気を絶縁し、電線を支える器具)で支えた「第一の創業」、自動車排ガス規制とグローバル化によって成長した「第二の創業」がありました。そして今「第三の創業」として、2050年の未来に向け、従来の内燃機関向けソリューションの提供から、カーボンニュートラルとデジタル社会への貢献へと事業ポートフォリオの転換を図ろうとしています。

 当然ながら人事戦略も、この新たなビジョンと、それにひも付く経営戦略とを整合させる必要があります。そこで2021年に、人事制度の再構築に向けた議論を開始しました。