丸井グループ 専務執行役員 最高人事責任者(CHRO)の石井友夫氏(撮影:川口紘)

 人的資本経営の先進事例として、よく名前が挙がる企業の一つが丸井グループだ。社員の主体性・自律性を促す「手挙げの文化」や、個人の評価から組織の業績を切り離した人事評価制度など、抜本的な人事制度改革を10年以上も前から推進してきた。丸井グループはなぜこれほど大規模な人事制度改革を断行し、定着させることができたのか。2013年に人事部長に就任以来、一貫して同社の人事制度改革をリードしてきた専務執行役員 最高人事責任者(CHRO)の石井友夫氏に聞いた。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2025年5月13日)※内容は掲載当時のもの

社員の主体性・自律性を駆動させる「手挙げの文化」

――丸井グループでは、10年以上も前から抜本的な人事制度改革を進めてきたそうですね。なぜそのような改革が必要だったのですか。

石井友夫氏(以下、敬称略) さかのぼって経緯をお話しすると、当社の業績は1990年に過去最高益を達成して以降、バブル経済の崩壊とともに急落し、長い停滞期に入りました。2007年以降は貸金業法改正やリーマンショックの影響で経営危機に陥り、上場以来初の赤字決算を2度も強いられました。

 その停滞期のさなかの2005年に青井浩(現代表取締役社長CEO)が社長に就任し、まず着手したのが企業文化の変革です。社会の変化に対応して新しいことに挑戦し、イノベーションを創出し続けられる企業に生まれ変わることを目指し、「お客さまのお役に立つために進化し続ける」「人の成長=企業の成長」の経営理念を策定しました。

 企業文化の変革にあたって、とりわけ注力したのが「手挙げの文化」の醸成です。