出所:共同通信イメージズ
事業の勝率を高めるために、欠かすことのできない「経営戦略の知識」。その学び方について「事業への応用性を重視することが大切」と語るのは、経営人材育成を手掛けるマインドシーズ社長の丹羽亮介氏だ。2025年7月に書籍『勝てる市場を選び、勝つための強みを作る はじめての経営戦略』(フォレスト出版)を出版した同氏に、売上高や利益率を大きく改善させたカルビーの戦略や、結果的に戦略転換を余儀なくされたナイキの事例について話を聞いた。
カルビーの利益率を大幅に改善させた松本改革
――著書『勝てる市場を選び、勝つための強みを作る はじめての経営戦略』では、約10年で売上高を2.5倍に伸ばしたカルビーの事例について解説しています。カルビーにはどのような戦略転換があったのでしょうか。
丹羽亮介氏(以下敬称略) カルビーは2000年代前半、「コックピット経営」と呼ばれるデータ経営を徹底していました。例えば、ある年の売上実績に基づいて翌年の製造計画をつくり、それに基づいた調達計画を立てて、ひたすら忠実に実行する、という具合です。
しかし、外部環境が変化していく中で、カルビーの製造体制は大きな課題を抱えることになります。当時、カルビーはポテトチップス市場の6割を占める圧倒的な首位だったにもかかわらず、製造原価はカルビーが65%、競合の湖池屋は57%となっていました。つまり、カルビーは湖池屋の倍以上の量を製造しているにもかかわらず、湖池屋よりも原価率が高かったのです。
こうした状況を受けて、2009年にジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人社長からカルビーのCEOに転身した松本晃氏が行ったことは「とにかく工場の稼働率を上げる」ことでした。
そして、カルビーのシェアの高さ、品質の高さ、小売企業に対する販売力の高さに注目し、データにとらわれずに、調達できるジャガイモを全量調達・全量製造・全量販売することを掲げました。ここでは全て売り切ることを目指し、そのためには多少の値下げは構わない、というスタンスを採ったのです。







