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車載ソフトウエアの標準化やAIとの連携など、これまでとは異なる水準で進化が進むSDV(Software Defined Vehicle)。先行する海外メーカーの間ではどのような動きが見られるのか──。2025年4月に書籍『SDV革命 次世代自動車のロードマップ2040』(日経BP)を出版したPwC コンサルティング・ SDVイニシアチブ ディレクターの渡邉伸一郎氏、同シニアマネージャーの糸田周平氏に、SDVの現在のレベルと進化の方向性、海外の先進事例、車載ソフト標準化の動向について話を聞いた。
5段階に分けられる「SDVレベルの中身」
──書籍『SDV革命 次世代自動車のロードマップ2040』では、SDVの概念や現状、可能性について解説しています。独自の基準として「SDVレベル」を提唱していますが、各レベルには主にどのような特徴があるのでしょうか。
糸田周平氏(以下敬称略) SAE International (Society of Automotive Engineers)が定義し、国土交通省も取り入れる「自動運転レベル」の定義に合わせ、SDVレベルを「レベル0」から「レベル5」まで定義しています。
SDVレベル0は機械部品を中心とした「機械制御車両」、レベル1はエンジン制御やブレーキ制御といった各箇所で独立した形で電子制御を行う「電気電子制御車両」、レベル2はカーナビといったインフォテインメント系に限定された形でOTA(Over-the-Air:無線ネットワークによる通信)が実装された「ソフトウエア制御車両」と定義しています。レベル0からレベル2までは、SDVが登場する前から存在する従来型の自動車を意味します。
レベル3の「部分ソフトウエア定義車両」では、一部の車両において車載OSやAPI連携の標準化が進んだ状態といえます。この段階では、走る・曲がる・止まるといった基本的な車両制御の更新および不具合以外の機能追加もOTAで実施できるようになります。
レベル4の「完全ソフトウエア定義車両」になると、車載OSやAPIの標準化が進み、ハードウエアとソフトウエアの分離が進みます。クラウドベースの仮想開発環境やソフトウエアファースト開発などにより開発スピードが加速し、OTAで更新できる機能が広がりを見せる段階です。例えば、自動運転を用いた追い越しといった複雑な機能も追加購入できるようになります。
レベル5の「ソフトウエア定義エコシステム」は、車両の内外がシームレスに自動接続された状態です。車両ソフトウエアのアップデートのみならず、車両外に移ったAIなどの頭脳系制御をソフトウエアが常時学習し、運転時の挙動やサービスのユースケースを自動的に開発にフィードバックします。それにより、新たなサービスの提供や既存サービスの継続的改善を繰り返すことで、ユーザーのニーズを深く満たせる状態になると考えられます。








