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 国内外の自動車メーカーによる開発が本格化しているSDV(Software Defined Vehicle)。しかし、その定義は明確化されておらず、メーカーによって目指すゴールや中身も異なるのが実情だ。SDVの登場によって、消費者と自動車との関係性、自動車業界のビジネスモデルはどう変わるのか──。2025年4月に書籍『SDV革命 次世代自動車のロードマップ2040』(日経BP)を出版したPwCコンサルティング ・SDVイニシアチブ ディレクターの渡邉伸一郎氏、同シニアマネージャーの糸田周平氏に話を聞いた。

SDVは車両自体ではなく「エコシステム」と考えるべき

──書籍『SDV革命 次世代自動車のロードマップ2040』では、SDVの概念や現状、可能性について解説しています。そもそもSDVとはどのような概念なのでしょうか。

渡邉伸一郎氏(以下敬称略) SDV(Software Defined Vehicle)は、ソフトウエアによって機能や性能が定義される車両を指します。従来の自動車がハードウエア中心だったことに対して、SDVはスマートフォンのように、製造・販売後もオンライン経由でソフトウエアを更新(OTA:Over-The-Air)して、さまざまな機能を継続的に進化させることを可能とします。

 このように、SDVは車両そのものを指す言葉でもありますが、車両のみならず、「ユーザーへの価値提供」を含めた包括的な概念とも言えます。そこで私たちは、SDVを「ソフトウエアを基軸にモビリティの内と外をつなぎ、機能を更新し続けることで、ユーザーに新たな価値を提供し続けるための基盤(エコシステム)」と捉えています。

 また、SDVが業界構造に変化をもたらす点も見逃せません。これまでの自動車製造は、自動車メーカーとサプライヤーの関係性によって成り立っていました。一方、SDVを通じたエコシステムには、サービス事業者やインフラ事業者といった新たなプレイヤーが参画できる余地があるため、業界の在り方が大きく変わると考えられます。