写真提供:CFOTO/共同通信イメージズ

 スマホやパソコン、家電、自動車など、生活に密着した機器の製造に不可欠な半導体。生成AI時代の到来でその重要性は増しており、米中覇権争いが熾烈(しれつ)を極める中、経済安全保障における最も重要な戦略物質と目されている。一方で、製品はメモリ、CPU(MPU)、センサーなど多種多様、多数のメーカーが製造工程ごとに世界中に点在しており、産業構造はあまり知られていないのが実態だろう。そこで本連載では、日本電気で一貫して半導体事業に携わった菊地正典氏の著書『教養としての「半導体」』(菊地正典著/日本実業出版社)から、内容の一部を抜粋・再編集。

 今回は、日本企業の主戦場である半導体製造装置業界について、製造工程と主要企業を概説する。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年7月26日)※内容は掲載当時のもの

製造装置業界は「前工程」向け、「後工程」向けの 二つに分かれる

 製造装置メーカーは、半導体の製造、すなわちシリコン(ケイ素)の基板上に多数のチップをつくり込む前工程向けと、完成した1個1個のチップを組立・検査する後工程向けの二つに大きく分かれます。そして、前工程に使われる装置をIDM企業やファウンドリー企業(前工程対応)に提供し、後工程用の装置をIDM企業やOSAT企業(後工程対応)に提供します。

■ 前工程の特筆すべき製造装置メーカー

 次ページの図(図1-4-1)「半導体製造工程の概略」を見ていただければ、前工程・後工程の中にどのような細かな工程があるか、それらがどのような順になっているかがおわかりでしょう。そして製造装置メーカー、材料メーカーがそれぞれの工程の装置・材料を提供します。また、ファウンドリー企業は前工程に、OSAT企業は後工程に対応していることがわかるでしょう。

 細かい話は後の章にゆずって、ここではこのような工程があり、それらを生産している企業としてどのようなメーカーがあるのかについて簡単に触れておくことにします。3ページの図表(図1-4-2)が前工程用の主な製造装置とその代表的メーカーです。