写真提供:ZUMA Press、©David Mbiyu/SOPA Images via ZUMA Wire/共同通信イメージズ

 インターネットで情報に即座にアクセスできる時代に、フェイクや偏った情報に惑わされず判断するには「科学的思考」が役立つ――そんな視点から著されたのが、『THIRD MILLENNIUM THINKING アメリカ最高峰大学の人気講義』(ソール・パールマッター、ジョン・キャンベル、ロバート・マクーン著、花塚恵訳/日経BP)だ。同書の内容の一部を抜粋・再編集し、「THIRD MILLENNIUM(=三千年紀/西暦2001年~3000年)」を賢く生き抜く知恵を紹介する。

「関係」があっても「原因」とは限らない? 思い込みを防ぐために科学者が用いてきた「因果関係の4つのモデル」「統計的手法」とは?

相関関係と因果関係

 骨粗鬆症(こつそしょうしょう、骨がもろくなる病気)のリスク要因となる行動を見つけるために、複数の国に暮らす人々を対象とした調査が実施された。その結果、一日あたり2杯以上アルコールを摂取する人の骨粗鬆症になる確率が高いと判明した。

 この調査報告を読んで、自分の一日の飲酒量を減らせという意味だろうかと不安に思ったかもしれない。だが、その点は調査結果では明らかになっていない。

 飲酒と骨粗鬆症に関連性がある可能性のひとつとして、一日に2杯以上飲酒する人には座りっぱなしの生活を送る傾向もあり、それが骨粗鬆症を招いていると考えられる。その場合は、週に何度かの早足のウォーキングと、軽い筋力トレーニングを少し取り入れるようにすれば、飲酒量は変えなくていい。だが、アルコール自体が骨粗鬆症の原因で、骨粗鬆症になりたくない場合は、やはり飲酒量を節制する必要がある。

 さて、原因はどちらか? どうすれば明らかになるのか?

 何が何の原因かを突き止めることは、なぜ難しいのか?

 突き止めるまでの基本的な流れはこうだ。まずは2つの要素に関連性があると気づくところから始まる。仮に、「飲酒量が多い人は骨粗鬆症になる確率が高い」と気づいたとしよう。だが、飲酒量と骨粗鬆症の関係性を明らかにしうる因果構造はいろいろある。次のページの例を見てほしい。