写真提供:共同通信社/日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 プロダクト企業からDX企業へ転換すべく、全社変革プロジェクトに取り組む富士通。JTC(Japanese Traditional Company:日本の伝統的企業)である同社は、いかに時代の変化を成長の機会と捉え、生まれ変わろうとしているのか。本稿では、『CROの流儀 』(大西俊介著/日経BP)から内容の一部を抜粋・再編集。CRO(最高収益責任者)が企業変革で果たすべき役割と、その舞台裏に迫る。

 富士通は2021年10月、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパスを具現化する新事業モデル「Uvance」(ユーバンス)を始動した。今回は、業種・業界の枠を超えて社会課題の解決に挑んだ2つの事例を紹介する。

サプライチェーンリスク可視化サービスの活用

CROの流儀』(日経BP)

 ここで社会課題に対する業種・業界の枠組みを超えたUvanceの事例を1つ紹介しましょう。「サプライチェーンリスク可視化サービス(以下、SCRV)」です。

 顧客である東京海上グループと共同で立ち上げ、災害時のサプライチェーン被害に対する補償を提供する新たな保険商品を生み出しました。顧客の事業領域拡大に成功しただけでなく、SCRVへの参加企業、サプライチェーン被災の影響を受ける企業に効果的な支援体制を構築するという提供価値を生むことにもつながりました。

 気候変動に伴う自然災害は世界に広がっています。日本でも地震や洪水、猛暑による大きな被害が毎年のように発生しています。経済産業省は「レジリエンス(強じん性)」をキーワードに新たなサステナビリティ施策を推進しています。

 レジリエンスは災害対策や環境問題のほか、地政学リスクやテクノロジーの進化など、ビジネスを取り巻く様々な課題への対応と密接に関係しています。変化がもたらすリスクにしなやかに応じる体制を整えるには、業種や業界の枠組みを超えた取り組みが不可欠です。

 損保会社にとって災害対策は一段と重要な課題になっています。頻発する自然災害によって、契約先がサプライチェーンの寸断や製造拠点の稼働停止といった事態に陥る可能性が高まっています。災害のリスクは完全に避けられません。

 被災時でも事業を継続・早期に復旧するには、災害のリスクをきちんと管理し、サプライチェーンに関わる企業間、あるいは協力企業間で必要なデータを素早く共有する仕組みが要ります。