写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ
プロダクト企業からDX企業へ転換すべく、全社変革プロジェクトに取り組む富士通。JTC(Japanese Traditional Company:日本の伝統的企業)である同社は、いかに時代の変化を成長の機会と捉え、生まれ変わろうとしているのか。本稿では、『CROの流儀 人・サービス・売り方を変え 提供価値と収益を最大化する』(大西俊介著/日経BP)から内容の一部を抜粋・再編集。CRO(最高収益責任者)が企業変革で果たすべき役割と、その舞台裏に迫る。
社長直轄の緊急営業活動「TIGERプロジェクト」では、旧態依然とした「営業の行動様式」を改めた。それによってもたらされた改革推進に必須の“成功体験”とは?
営業の行動様式の課題と対策
『CROの流儀』(日経BP)
私が以前在籍したコンサルティング会社などのグローバル企業では、経営幹部が顧客と直接対話してビジネスの機会を作るのは当たり前の行動です。ところがTIGERプロジェクト以前の富士通では一部の役員を除くとこれまであまりできていませんでした。そもそも日本の企業では役員が商談に自ら赴くことがあまりありません。
年始などにまるで大名行列のように役員が連なって訪れることはあっても、季節の挨拶の後は担当者が1人でずっと話を進めるパターンが大半です。管理職や役員は部下から上がってくるレポートをレビューするだけ。私はかねがね役員のこんなにもったいない使い方はないと思っていました。
取引先の社長や役員から商談の機会を求められれば、みなさんの会社も相応の役員が対応しますよね。そこで自社では気づいていなかった潜在ニーズをあぶり出すような提案をその社長が自らの言葉で提示すれば、おのずと話に真摯(しんし)に耳を傾けることでしょう。商談を持ちかける側からみても、担当者が経営幹部にたどり着くまでの伝言ゲームを省き、素早くビジネスに落とし込んでいけるわけです。
最近は外資系のIT企業やコンサルティング会社の経営陣のように、ビジネス向けSNSのLinkedIn(リンクトイン) などを使って日本のIT企業の社長や役員が自分自身の言葉で発信する場面に遭遇することが増えてきました。それでもCEOより下のレベルを見ると必ずしも多いとは思えません。企業のリーダーが事業戦略や提供したい顧客価値を自らの言葉で発信することはリーダーとして欠くことのできない責任であると私は考えます。






